超巨大な翼を持つ迫力のシルエットが特徴のエグザモンだが、実はその翼のデザインがなんとも間違えられやすい。しかも、近年になるほどその傾向が強くなっている。
まずはエグザモンについてのおさらい。エグザモンの翼は、銀の枠組を持つ超巨大な「背中A」、その下に重なるように配置される、デザインは近いが小さめサイズな「背中B」、
そして背中ではなく腕に生える、真っ赤な「腕C」の合わせて3対、合計6枚の翼を持つというのが正しいデザインだ。
今でこそドラコモン系の最終形態として知られているエグザモンだが、予想していた人も多くいた通り、実は開発段階では
ウイングドラモンから進化する究極体だったらしい。
なので、デザインもウイングドラモンの発展形と呼べるものになっている。
確かに公式絵を見ただけでは
6枚の翼があるのは分かり辛いが、別ポーズで分かりやすいイラストは当時からちゃんと存在していた。
初登場ゲームだったバトルターミナル02では当然あっていたし、リ:デジタイズでも6枚の翼がちゃんとつくられていた。
左がバトルターミナル02で、右がリ:デジタイズ(デコード)。実は地味に別モデル。
恐らく最初のミスは、DSソフト「ロストエボリューション」。DSのデジストシリーズは、公式絵や既存イラストをベースにグラフィックをつくるコトが多く、
エグザモンもある程度は公式絵を下地としてつくられてはいた。しかしそれは完全に元絵をコピーするというワケではないので、グラフィックに起こす際にどうしてもグラフィッカーのデザイン理解度も問われてしまう。
結果、公式絵ではあまり目立たない「羽B」が省略されてしまった初のエグザモンが誕生する。この「羽Bが省略されてしまう」というのが、エグザモン翼界隈において最も多いミスだ。
特に手痛いのが、人気ソフト「サイバースルゥース」の新規モデルでここがガッツリ間違われてしまったコトだろう。サイスルの美麗なモデルは他のゲームにも広く流用されたため、
リンクス、ネクストオーダー、ハッカーズメモリー、リアライズと、実に多くの作品に、そして多くのファンに羽不足エグザモンが供給されてしまい、誤解を定着させる大きな要因となってしまった。
(なお、サイスルで登場したエグザモンは巨大ボス版と通常版との2種類が登場するが、どちらも同じミスを抱えている)
また別のミスとして、コレクターズや新デジカのように、「背中Bがない代わりに腕Cが背中に移植される」というパターンも散見される。
腕からもがれるとまではいかずとも、腕Cが肘ぐらいまでにしかくっついてない例もあるが、公式デザインとしては「手首までつながっている」のが正しい解釈のようだ。
さて、そんなこんなで「エグザモンの翼は6枚が正解」なのだが、それはそれとして、エグザモンの翼は6枚であるという認識を阻害してしまう要因があると自分は思っている。
というのも、エグザモンの公式設定にはこういう記述がある。
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意思を持った巨大な翼「カレドヴールフ」と巨大なランス「アンブロジウス」を持っている。「カレドヴールフ」はすべてクロンデジゾイドで構成された特殊な翼であり、「カレドヴールフ」自身の判断により、時には飛翔するための翼になり、また時にはエグザモンを守る盾ともなる。
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…とのコトで、エグザモンの翼には、意思があるらしい。この「意思を持つ翼」というのがまずピンとこないのはさておき、基本的に翼と言われれば、人は「1対」のものを想像すると思う。
ましてや「意思を持つ」とまで言われたら、なおさら「翼がひとつの生命体」として捉え、1対しかないものだと認識してしまうように思う。
それ故に、腕Cのコトはともかく、「実は背中だけでも翼は2対ある」という正解に辿り着けない人をつくってしまう一因となっているのではないか、と自分は考えている。
何はともあれ、エグザモンの翼は6枚あった方がよりハデでカッコいいので、カレドヴールフくんにはこれからもっとシッカリと自己主張を行っていただきたいものだ。
(2022/07/16 掲載)
【追記 2022/07/29】
デジモンカードゲームにも参加しているイラストレーターの某氏から、この件についてのコメントが出た。
その旨は、「現行のエグザモンのデザインは、
公式絵を基準にしているものではない(!)ため、
(少なくとも、この弾で登場した)エグザモンのデザインは別に誰も間違っているわけでない」というものだった。
この弾=ドラゴンズロアにはエグザモンが描かれたカードが3枚あるが、確かにどれも同じ翼事情のようだ。
さて、「現在は公式絵が基準ではない」というのも驚きだが、ならば基準になっているものは何だろう。それを考えると、やはり「設定画」が起こされているアニメ版が怪しい。
上の画像にも載せてあるが、改めてこのクロスウォーズに登場したエグザモンのデザインをよくよくチェックすると、実はこの時点で翼の「背中Bが省略されて、腕Cが背中に移植されてる2対の状態」になっていたようだ。
たまたま腕からも翼が生えてるように見えた後続のほとんどのエグザモンも、実際はこのアニメ準拠になっていた可能性が高い。
つまりは、「意図的にアニメ版に合わせているので、翼が4枚なのはミスではない」という理屈になるのだろう。
…しかし、そう言われて「はい、そうですか」と納得できるコトだとは言い難い。
まず、公式絵は別に修正もされずそのまま使われている、というのが一つ。
確かにアニメ版を基準に描かれがちなデジモンは他にもいるが、ここまで部分的なデザインの乖離が明確なパターンは珍しい。故に話がややこしくなってくる。
そして誤解のないよう先に言っておくと、「アニメで動かす際に公式絵からデザインを変更する」パターンは少なくないし、それ自体は決してミスと呼ぶべきものではない。
一方で、そういったアニメ版デザインの中には、
角つきフーガモンや
オールデリーソのように、
「どう見てもただ間違えただけ」のブツが紛れているコトは、このページでも紹介済みだ。 エグザモンの翼だって、別に「あえて大きく変更しなければいけなかったパーツ」だとは到底思えない。
単なる線の簡略化ならともかく、わざわざ「腕の羽を背中に上書きするようなデザイン変更」が必要だったろうか?
原点となる公式絵の翼デザインが分かり辛いというのは確かだし、これは単純に「設定画の制作者が解釈を間違えてしまった」と考える方が自然ではないか。
(クロスウォーズは他にもガイオウモンやらネプトゥーンモンやらマタドゥルモンやらグランディスクワガーモンやらアポロモンやら、解釈が怪しいデジモンも少なくない)
大体、エグザモンは当初の進化コンセプトだと コアドラモン青(1対)→ウイングドラモン(2対)→エグザモン(3対)…といった感じで、空戦特化に伴い翼が増えていく発展形デザインでもあったはず。
それを他の媒体でも「アニメ作画に合わせて2対にしました」という処置は、ちょっと配慮に欠けるのではないか。 それに、クロスウォーズの後にもデコードで翼が6枚のエグザモンが登場しているので、結局はデザイン変更を統一できてもいない。
そもそもの話、「アニメ用設定画を使う指定があった」というだけでは、肝心の「監修側が公式絵とアニメ設定画の相違点を理解しているか」が不明だ。
本来のエグザモンのデザインを理解せず、アニメ版のミスを知らずにチェックが容易な設定画に頼っただけなのか、それともすべてを知った上でアニメ版を優先したのかで話は違ってくる。
しかし、オメガモンを代表とする「公式絵とアニメとでデザインが大きく異なるデジモン」の場合でも、公式絵版が採用されているコトを踏まえると、わざわざアニメ版を尊重する采配に理があるとは思えない。
この件は、確かに監修と依頼先の間では「間違っていない」という形になるものなのかもしれない。
しかし、「設定画自体の正当性」や、「公式絵を無視してアニメ版に寄せる必要性」まではクリアできないがために、釈然としないコトになってしまった。
なにより、個人的には上でも述べたように、エグザモンの翼は6枚あった方がカッコいいと思っていたのに、
これが「うっかりミス」ではなく「意図的な変更」、つまりは今後も修復を望めない案件であるらしいコトが、ただただ悲しい…。