デジモンコラム
「デジモンアドベンチャーtri.第2章」見てきた


 公開日:2016/03/13


 ◯   人   ◯


 ↑レオモンの乳首



 前回のコラムで「もう新章の度にいちいち書かないよ!」と言いましたが、気が変わりました。

 シリーズが復活した、「久々の1発目」というのは、評価が甘くなるのです。
良いか悪いかの判断基準がないために「よし、自分で見て確かめよう」を手を伸ばしてくれる人が数多くでるし、
その復活した作品の内容はどうあれ「復活してくれただけでもうれしい!」という人もいます。
 つまり、その「復活したシリーズ」の評価は、一発目だけで判断するのは早計、「どう転がっていったか」が大事だと思います。

 1章はチュートリアル的な部分も多く、2章からが本番というパターンも多く、tri.もまたそうでしょう。
なので、自分は他の人の感想が気になったので、まずは自分でも書いておこう、という次第です。



 2章について最初に言っておくと、1章と同じような感想でアレなんですが、「まーまーよかった」って感じです。
かつての人気作「デジモンアドベンチャー」に(悪く言えば)便乗した作品ですが、 
ちゃんとその作品に追いつこうと努力して、持ちつ持たれつの作品になっている。
「こんな未来の可能性もあったのかもね」と納得できて、「後付でつくられた続編」としては上手くまとまってると思います。

 
 ところで俺は、tri.の絵が嫌いです。
「嫌い」にも色々ありますが、「自分にとって全く魅力的に映らない」といった感じの「嫌い」です。
別に過去のアニメシリーズの絵が好きってワケでもないので、「もとに戻せ!」と署名行動を始めたりはしません。

 でも、別に絵は直接的に作品の評価に繋がりません。
絵は別に好きじゃないけど大好きな作品、絵は大好きだけど見てすらいない作品、大体誰にでもあると思います。

 だのに何故わざわざ「嫌い」なんていうのかと言えば、「絵」と密接に関わる重要な要素、tri.の「演出」がもっと大嫌いだからです。
演出がひどいせいで、元々自分にとって好みでもない絵が、「好きになれたかもしれない可能性」を殺されているのを感じます。

 人間も、デジモンも、シリアスな作風のくせにクレヨンしんちゃんみたいな背景の空も嫌いです。
誤解のないように言っておくと、キャラクターデザインを担当した宇木さんの絵は嫌いじゃないし、これはこれで好きです。
宇木さんの絵から少し崩れた、本編のコレジャナイ絵が嫌いです。ついでにいうと女性向けアニメ雑誌のtri.ピンナップの絵柄は生理的にムリです。

 単純に、1章も2章も映画館で見るにはちょいアレな作画です。悪い意味で、テレビで放映されていたデジモンアドベンチャーと比肩してます。
2章で言えば序盤の方に、姫川さんが車を運転してて顔がアップになるシーンがありますが、目のバランスが崩れてるのがすぐ分かります。



 具体的に演出の話に入ると、まず気になったのが心情描写のワンパターンっぷり。
涙や雨で水滴がぽたぽた落ちて悲しさを表現するの、2章だけで3回ぐらいやってました。お前はフロンティアの最終話か。
顔のアップが多かったり、やたら台詞で説明するのが多かったりと1章のイヤな部分も引き継いでました。2話目になると流石に気になってきます。


 そして1章の頃から気になってたのが、「崩し絵」。
普段の絵柄とは違い、ギャグマンガみたいな顔になったりするアレですね。
これは過去のデジモンアニメにもありましたが、過去は元々の絵柄がコミカルだったので、ギャグ顔に移行しても違和感が薄かったからいいんです。
tri.は絵柄の頭身が上がって、大人びている。だのに、ギャグが入ると急におじゃ魔女どれみみたいな絵になるので、ギャップが凄いです。
「このギャップが良いんだよ!」って人もいるのでしょうが、俺は「ハイここ笑うところで~す」というわざとらしさが気になって冷めます。
「tri.のキャラのためのギャグタッチ」を用意できてないので、見てて恥ずかしくなるシーンにしか見えません。

 別に、tri.のギャグがつまらない訳ではないんです。 
例えば2章のレオモン。
光子郎のサーバーで成長期デジモンたちに囲まれているシーンなんか、上手い具合にシリアスな笑いを演出できていたし、頼もしくも可愛くて良い感じでした。
でも、メイクーモンに媚びられてハートがズキューン!ってなるカット、すげぇ台無し感がありました。

 全体的に、「スタッフが狙ってるのかどうかも分からない場面」で面白いシーンが何個もあるので、尚更わざとらしいギャグが残念に思えます。
ていうかそもそもtri.に崩し絵はいらないと思います。わざわざ崩さなくても、作画崩れてるし。



 シナリオにも軽く触れておきます。
2章は大体、新メンバー芽心ちゃんとメイクーモンのキャラ立て回でした。
別に俺自身はこのペアをなんとも思ってないのですが、不快なキャラではないし、8人の選ばれし子供にはいなかったタイプなので、良いと思います。
…でもメイクーモンは流石にテイルモンとキャラというか、ポジションが被りすぎかなぁ?
被った2体をどう対比させていくのかまだ分かりませんが、2章の段階では「メイクーをメイン、テイルを空気」にするコトで差別化してましたね。

 で、2章は宣伝通りに、温泉回でした。温泉回という視点で見れば、ゴミでした。
芽心ちゃんのための親睦会だったのに、まさか芽心ちゃんが大江戸温泉の湯船に浸からずに終わるとは思いもよりませんでした。
ハイライトは、太一とヤマトがサウナで2人っきりの熱い時間を過ごす場面だったのかな?


 んでもって文化祭でした。
ミミちゃんがアメリカンないやらしい衣装の喫茶店をやろうと企画したら周りにドン引かれる話でした。
「ミミちゃんは自己中だけど本人の魅力で周りも楽しくなっちゃうんだ!」って路線に行くのかと思ったら、
周りとの和解パートが全然なかったので、「ミミちゃんは自己中なんだ!」で終わってたんですが、これでよかったのでしょうか。
リアルっちゃリアルですが、ミミちゃんと芽心ちゃんのダンスを見ている内に他の女子も影響されて、
こんなこともあろうかと沢山用意していた衣装を着て喫茶店は大盛り上がり! な感じでも良かった気がします。
ていうか、1章の頃からモブがクズというか「嫌な奴」って見せ方が多いのがあんま気持ちよくないです。
 ついこの前街を謎の怪物がブッ壊してニュースになったっていうのに、
学校をほっつき歩いてるアグモンたちを見ても「なんだ、仮装か」とか思っちゃう程度には頭お花畑なんだから、もっと良い意味でアホでいてほしいです。


 そして丈先輩は受験勉強でした。
「受験を控えているせいで他の子供達と一緒に戦えない自分がもどかしい!」というテーマなんですが、正直、これどうなんですかね?
これって「丈という個人の問題」ではなく「受験生の問題」って感じがして、丈はひたすらに気の毒だけど、俺の感想はそこで終わりです。
丈は何も悪くないし、悪いのはこんな時間軸の設定にしたスタッフです。

 あと気になったのが、トゲモンがチクチクバンバンでうっかりヘリを撃墜してしまった爆笑シーンのせいで丈の予備校が休講になるんですが、
その後ミミちゃんと話した時に、「予備校サボったの?」と聞かれてそれを肯定しているのがよく分かりませんでした。
「予備校お休みだしこれでゴマモンと戦えるぜイヤッホウ!」って流れにはならず、
「予備校が休講になったのに、実際は休講じゃない(休講は一瞬だった?)ので結局行かなきゃならない」という、よく分からん見せ方でした。

 2章において「丈が勉強と戦いのどちらをとるのか」というのは大事な部分のはずなので、紛らわしい描写は挟んでほしくなかったです。



 そしてまぁ、一乗寺賢がメイクーモンを謎空間に拉致り、そこになんとか突入できたレオモン、パルモン、ゴマモンの3体だけで戦いに。
そのお相手が、予告通りにインペリアルドラモン(よく分からないカラー)。
インペリアルドラモンといえば「完全体相手にも苦戦する皇帝竜の屑」として知られていますが、
いくらなんでも「インペリアルドラモンVS成熟期・成長期」っていう対戦カードはインペ側が可哀そうというか、絶望感の演出にもなってなくてなんか微妙…。

 タケルが賢ちゃんを「なんでまたカイザーやってんの!?」って感じで知ってたり、
姫川さんがインペリアルドラモンを知ってたりと、「この世界で02の扱いどうなってんの?」と興味を引くのはウマかったです。


 
 んで、丈とミミちゃんがなんか成長して(正直あんまよく分かんなかった)究極進化のヴァイクモンとロゼモンを体得しました。
ここの演出も全然盛り上がりませんでした。
まず成熟期に進化、んで完全体に進化、ついでに究極体にも進化できちゃった! そんな感じの見せ方でした。

 個人的には、一気にワープ進化で最強形態になってくれた方がカタルシスの演出にもなったろうし、
あるいは完全体から究極進化する場合なら、「駄目だ!完全体のパワーではまだ勝てない!」という「更なる進化の必要性」を示してほしかった。
完全体で必殺技を撃ったあと、そのまま進化しちゃったのは肩透かしでした。


 進化といえば進化バンクなんですが、成熟期までの進化は1章で見たあの疾走感ゼロのバンクそのままでした。
トゲモンのバンクはノーカットで2回流れたし、前回見られなかったイッカクモンのバンクはキメポーズがヤバかったので、2章でもカットしてくれても良かったです。

 気になる完全体以降の進化シーンは、オメガモン同様にポリゴンではなく手書き。
演出は「まだ進化してないのにほぼ完成品の姿を先に見せられる」「デジモンごとに背景などで大して個性分けがされてない」と、かなり微妙でした。
無印の超進化バンクは全員見せ方が違ったのも大きな魅力だったのになぁ。
ていうか、tri.はキメポーズのセンスが本当にマジで何なんすかアレって感じで嫌いです。
ズドモンのポーズ、なんか既視感あったよなぁと今思い返してみればアレだ、ジークグレイモンだ。あれもひどかった。

 花のつぼみに覆われているので進化後の姿がぼかされる、リリモンだけが救いでした。しれっと胸が盛られてたのも俺は超OKです。
その後のロゼモンはキメポーズで全然嬉しくない乳揺れをしてたので、全然嬉しくなかったです。


 見せ場となる戦闘は、俺は何をやってるのかさっぱり分かりませんでした。
動きがカクカクで、連続してカッコいいポーズ!をとってるような動きなので、流れが読めません。戦い辛い相手だ。
枚数が少ないのにカッコよく動いてるように見える、金田伊功さんの所謂「金田作画」というのがありますが、それをマネしそこねたような印象。
背景が黒いのも相まってどう動いて何をやってんのか分かんなくて、「カッコいい、カッコ悪い」以前の感想でした。

 あとtri.は「必殺技名をあまり叫ばない」という謎の新ルールが採用されているので、
「今、こんな技を撃っているんだ!」と脳の理解の助けになってくれません。
 お、叫んでくれたと思ったらヴァイクモンが「アークティックブリザード!」と言いながら氷要素ゼロでミョルニルを振り回すだけだったりして…。



 そしてまぁめでたくなんとか勝って、レオモンが最後に殺されてノルマ達成してました。
「メイクーモンが実は凶悪なデジモンである」という印象付けのために誰かを殺そうとなって、一瞬でレオモンに白羽の矢が立ったのだと思うと涙が出ます。
せっかくはじまりの街で転生(?)できたのに、こいついつも死んでんな。
もういい加減レオモンが死んでもはいはいワロスワロスって感じなので、別のデジモンを殺しておいた方がよかったと思います。
 



 ここまで書いてて話も割とボロクソに書いてると気付きましたが、それでも面白かったのは本当ですよ。まーまー。
アラというかツッコミ所はいくらでもあるんですが、ちゃんと「続きは気になる」というつくりになっているのがミソなんでしょうか。



 そしてエンディングですが、sevenの曲調が2章の終わりに全然あってないし、ていうかもう選ばれし子供はnineだし、
映像も男4人の浴衣姿で画像ソフトのエフェクトつける練習をやってるだけのクッソつまらないものだし、
画像が女の子に切り替わるコトもなく途中で消えてそのまま何もなく終わるという1章以上のクソだったので、ここらへんなんとかしてほしいです。

 イチ視聴者としてはtri.自体を「デジモンアドベンチャーの新しい物語」だと認識できているのに、
そこに提供される楽曲がどれも旧作のお下がりなのは正直寂しいところです。素直に新曲つけてくれてもいいじゃないですか。



 そんな感じで、特に推敲もせず書き殴りました。
こうやってアレコレ文句をつけるのも作品を楽しんでいる証拠なので、ちゃんと3章も見に行きます。
あんなデクスドルガモンみたいな姿になっちゃうんだなぁ。


 ちなみに俺が2章で一番好きなシーンは、ロッカーの中に首がキュッと締まったアグモンがいたシーンです。夢に出そう。


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