デジモンコラム
「デジモンアドベンチャーtri.第6章」見てきた


 公開日:2018/05/06




 第1章の公開からかれこれ2年半。
永かったtri.との戦いもこれで終わりか…などと余韻に浸る間もなく、6章公開前日に新プロジェクトを発表してくるのだからたまったものじゃない。

 まぁ分かりますよ。
6章が終わって一区切りついた後に発表だともう人が戻ってこないかもしれないから、早めに情報をチラ見せして捕まえておこうって魂胆でしょ?
まぁ、作品の質に問題がなければそんな小細工せずとも人は残るハズなんですけどね。



 最終回なのに「これで終わり」という特別感はブチ壊されたけど、おかげで冷静な心もちで6章に臨めた気がする。 
そんなワケで見てまいりましたよ、横浜ブルク13で朝イチの回。
思えば1章から6章までずっと劇場はここに通ってたけど、少なくとも自分が見る回はいつもマナーがよくてよかったなぁ。

 あ、当然のようにネタバレ全開でいきます。 もうtri.について何度もコラム書きたくないし。
 
 

 先に結論から言うと、思いのほかまーまーよかった、と言える気がします。
ただこれは「ふらっと映画館に立ち寄って知らない映画を見たらまーまーよかった」のではなく、
tri.という作品を1章から5章まで追いかけてその独特な作風を理解して、
さらに5章という地獄を乗り越えて少し強くなった自分が、諦観マックスでハードルを下げに下げて見た上で、まーまーよかったです。


 流石にあの5章よりも下のモノを見せられていたら、俺も劇場でフォールダウンモードに暗黒進化して
周りの客をとりこんで何らかの存在に変貌し現実世界を危機に陥れていた可能性があったので、よかったよかった。


 …ただまぁ、前半だけで言えば5章を超える地獄
最終章だというのにこれでもかと言わんばかりの無駄な尺遣いと、状況に見合ってない寒いギャグの嵐
tri.史上でも最大級に、見ていて恥ずかしいシーンが多かった。
恥ずかしいと言っても、恋愛描写みたいな甘酸っぱい理由ではなく、ただただ、あまりにも稚拙すぎて
 

 さて本編開始。
結局最後まで平田さんに読み上げらもらうコトはなかった冒頭あらすじくんともこれでお別れか。
あまりにも内容がなかった前回を説明するのに露骨に苦しんでいたり、
「イグドラシルに操られたデジモン」など地味にここで明かされる設定があったり、
太一たちは誰と戦っているのか分からなくなった」などと、文章力の低さがキャラクターをバカにしたりと見所もそこそこ。


 前回はラグエルモンがテイルモンを取り込んでオルディネモンになってマジヤベェとなって、
オマケに太一と西島先生が生死不明になってほぼ詰み状態になったけどヤマトが「止まるんじゃねぇぞ…!」と仲間を激励していたはずなのに、
なんでお前らカメラまわってるのに気付いてない雛壇芸人みたいなノリで座り込んでんだよ。

 そこから、前回のヒカリの闇堕ちが唐突すぎると言われたのを気にしたのか、
今更になってヒカリの心が闇に染まっていく描写を長々と追加。遅いし、いらねぇよ!!
今まで散々ピンチを潜り抜けてきたはずなのに「太一が崖から落ちただけで闇堕ち」という展開の不自然さが問題だから、
そこにかける時間が1分だろうが2時間だろうが、感情移入のできない三文芝居なのは変わらないんだよなぁ…。

 この途中、1章の始まりと同じ「太一の部屋で目覚まし時計が鳴っている」ってシーンがあるのだけど、
6章自体がこのシーンから始まって、そこからヒカリが太一を起こしに来たら「太一がいない!そうだ、太一はもう…!」って流れだったなら
もっと上手い演出だったのになぁ、…と、一緒に6章を見たけーいちが言ってました(受け売り)


 太一がいなくなって絶望に打ちひしがられているのかと思いきや、
デジタルワールドと現実世界が融合していく様を見て「これでいつでも会えるね♡」などとあまりにも呑気なセリフが飛び出てくるのでほんとtri.の倫理観は怖い。

 「オルディネモンは現実世界行っちゃったけど、俺らどーすっかなー太一もいねーしなー」と最終章らしからぬ行動力の無さでグダグダしていると、
誰かが気を利かしてくれたのか、人間界に行ける感じの歪みが生じたのでお世話になる子供達。
あれから3年経ってるんだから、02みたいに能動的に世界を行き来してるシステムつくってほしかったなぁ! あれ、D-3持ちが2人いるような…。

 「次は現実世界か~」と移動教室レベルの緊張感で移動する子供たち。
途中、太一を失ったショックに思わず足を止めてしまう空。ヤマト以外それに気付かず完全スルーする子供たちとデジモン。そういうとこだぞ。
「太一はきっと、生きてるよね」と弱音を吐く空に対して、何も言えないヤマト。そういうとこだぞ。いや、ヤマトはそういうキャラかも。
でも前回急に「立ち止まるな!」とか言い出したんだから、ここでも「当たり前だ!俺達が信じないでどうする!」と喝を入れたり、
リアリスト路線にしても「今は考えるな。そんな気持ちじゃ、お前まで危険な目に遭うぞ」とか言ってくれりゃいいのになぁ。

 見ていたピヨモンが「空、どうして泣いてるの!?ヤマトにヘンテコなラブソングでも歌われたの!?」と急にtri.ジョークを挟んでくるのが辛い。
この鳥、リブートで記憶ないはずなんだけど、4章から現在にかけて、どこかでヤマトが空にラブを歌うシーンでもあったのでしょうか。


 さあ帰ってきたぜ現実世界!オルディネモンと決着だ!
…とはならず、オルディネモンの姿が見当たらないので光子郎の部屋でひとまず休憩。 だからもう尺がないつってんだろ!!

 別に、早々とオルディネモンを倒して後はずっとエピローグ!とかでも良かったのにな。
長々と戦って楽しい相手でもないし、倒してカタルシスが得られる相手でもない。
でもそんなあっさりと倒してしまうと今までの展開がムダになってしまうし、やっぱ根本から話の組み立て方が非効率的なのを感じます。


 色々ある内にヒカリは熱を出してブッ倒れて戦線離脱。こいついつも熱出してんな。
タケルとパタモンが看病役として病室に付きそうんですが、tri.ってほんとタケルとヒカリくっつけたがるなぁ。
別にこの2人って将来的に結婚したワケでもないし、この2人が絡んでも話はあんま面白くならない印象がありますが。


 ベランダだかバルコニーだかで、独り離れたそがれるヤマト。
太一を失ったショックはヤマトにとっても大きく、この先どうしたものかと思い悩みます。
そこに現れるガブモン。ヤマトに抱きつき、「パートナーのオレをもっと頼ってくれ」と妙にスキンシップシーンが続きます。
ところであなた、記憶失ってるはずなんですが、大丈夫?

 そしてコトもあろうに、「大丈夫、ヤマトなら太一の代わりができるよ」とtri.史上でも最上級のクソ発言。
あの…「ヤマトはヤマトだよ。太一の代わりなんかじゃない」ってのは、無印でめっちゃ丁寧に描かれた部分なんですけど…。
これに「ああ…」と答えるヤマトも精神を疲弊しすぎなので、ヘンな絵画とかツボとか買わされないか心配になってきます。

 あんま他人の感想にはとやかく言いたかないけど、このシーンを「良かった」って言う人がけっこういるのもなぁ…。
あ、でも俺、ようやく分かったんですよ。
自分から見たらどう見てもガバガバなtri.に対して、「やたらと肯定的に捉える人はどういう思考で見てるんだろう」ってのが。

 tri.って全体的に説明描写が全然足りてないんですが、説明描写が弱いという説明描写すら弱いので、
一周まわって「前後のつながりなどを深く考えなければいいシーンに見えてしまう」ってのが所々仕込まれていて、
たぶん、肯定的な人はそういう見方をしているんですよ。つまり、騙されてるんだなって。

 例えば5章だったか、落ち込む芽心に対してアグモンが「皆もメイクーモンが大好きだよ」って励ますシーンがあって、
確かにアグモンがイケメンムーブ見せてるように見えるけど、
実はアグモンはリブート後にそのシーンまでメイクーモンと全く話したコトがないという実状があって全然セリフに重みがなかったりとかですね…。

 いや、「言わせたいコト」は分かるんだけど、tri.って全体的に言葉選びがヘタクソなんだよなぁ…。
丈も頑張ってるんですけどねぇ。丈には頑張ってもらわないとな。


 ヤマトとガブモンが濃厚なラブシーンを続けていると、
他のデジモンたちが興味津々にずっと覗いていて、ヤマトにバレてうわ~逃げろ~というtri.お馴染みの定番ギャグ
このタイミングでこんな激寒シーンを挟める神経が本当に分からないんですが、これがデジモンアドベンチャーtri.なんだよな…。

 空の彼方に、時空の歪みを検知するガブモンと、それに続いて太一ゴーグルを装着するヤマト。
えらいね、ちゃんとそのゴーグルにデジモン検知機能がついてるって覚えてたんだね。できればガブモンが気付く前からつけてね


 そんなワケでオルディネモン戦なんですが、無駄にインターバルを挟んで分割されてる上に、
前半戦では究極体5体で挑んでボロ負けしておいて、後半では完全体と成熟期で再戦という信じられない舐めプを見せられます。
お前はフロンティア49話か。

 戦闘が仕切り直されると何が辛いかって地獄のノーカットバンクが改めて流されるコトで、
画面が分割で同時進行とは言え、成長期→成熟期→完全体→究極体と、成長期→成熟期→完全体をねっとりと強制堪能させられます。
バンク自体が良ければ全然苦でも何でもなかったはずなのに、演出力と個性とスピード感のなさに定評のあるtri.バンクなので心がもう息苦しい。
結局、最後までこのキャラデザ…というか本編作画と、進化バンクは全く好きになれなかったな…。

 究極体戦ではアークティックブリザードやスターライトエクスプロージョン、ギガブラスターなど必殺技ラッシュもお披露目。
技名をバンバン叫んでくれるのは分かりやすくていいですね。今まで「映画リスペクト」と称して無言で撃たせてたのは一体何だったのか分からなくなりますが。

 しかしせっかくの究極体総進撃はオルディネモンに全く効果なし。
オルディネモン自身はやたらと尻を見せながら体当たりを繰り返したりするばかりで、ラスボスとしてはイマイチ面白くない。
無数のデジモンを大量出現させる能力を見せたりするも、特に爽快感も何もなく、場繋ぎだなぁ、という感じ。

 そしてそうこうしてる内にあっさり負ける究極体軍団。
みんなが究極体に進化できても太一が全然ラクになってないようですが、ヤマトさんどう思います?


 なお、この間にもところどころ、デジモンカイザーの姿をしたニセゲンナイの姿をした謎の男のシーンも挟まれていきます。
この男、その正体は結局「イグドラシル側の何か」らしいんですが、結局正体は分かりません。
しかもいちいちセリフがゲスく、おまけに語彙力が背伸びした小学生レベルなので、ひたすらに不快
「人間は愚かだぁ!」「最後のダンスを踊れ!」などと本当につらい。ドヤ指パッチンもウザい。
作画も妙に顔芸が多く、動きもシリアスムードに水を差すような悪い意味でコミカルなものばかりで、本当にうっとうしい。
4章の頃はペロペロを見てもここまで不快なキャラだと思っていなかったけど、脚本の違いなのでしょうか。
tri.のもつ「稚拙で不快でファンの神経を逆なでする部分」を全て凝縮したかのようなキャラで、俺のtri.ヘイトは全てこいつに向かいました。

 不快な敵キャラというものは、「ヒーローに倒してほしいと願いたくなる感情移入」、
「そんな敵が倒されるコトによるカタルシス」などを演出するためのカンフル剤として投入するものだと思うんですけど、
キャラの扱いの雑さにかけてはデジモン史上でも屈指のtri.ならば、「ウザキャラを出して、そこで終わり」です。

 ところでこいつ、散々言うように「デジモンカイザーやゲンナイの姿を借りた偽物」なんですよね。
でも子供達はこの姿に対して動揺もしていなければ、激しい怒りも訴えていない。ゲンナイに至っては元々同じ姿のエージェントが無数にいる
ていうか「デジモンカイザーやゲンナイ本人であるという勘違いすら起こしていない」。
それって結局、カイザーの改心した賢ちゃんや、子供たちのよき協力者であったゲンナイさんが好きな、
一部のファンを意図的に不快にさせている形にしかなってないんですけど、これ一体どういうメリットがあるんでしょうか。

 なんかハックモンとの会話では「昔から意図的にこの姿をしている」らしいんですけど、そういうところを描け
勿論、作品とは「現実世界に存在するファン」に向けたモノであるのが第一なんですが、
「劇中で何故そうなっているのか」に対しても、ちゃんと理由をつけなくてはならない。ここが、tri.に根本的に足りてない所なんだよなぁ。


 既にだいぶうろ覚えなので流れはアヤフヤですが、とりあえずオルディネモン戦ではボロ負けして一旦中止。
休憩時間に入ったので、コンビニメシをキメる選ばれし子供たちご一行。
ハックモンがけっこうノンキしてた子供達の前に現れて、ホメオスタシスの最終計画について教えてくれます。

 「色々ある内に現実世界もデジタルワールドと同じようなつくりになってたから、現実世界もリブートするわ」とのコト。
ホメちゃんとしてもメイクーモンを消去できなかったのは失敗だし、
このままデジタルワールドや人間界も滅ぶのは安定調和党の自分らとしてもアレなんで、これでゆるして、というコトらしいです。

 「ふざけんな!!1!!!」とハックモンに掴みかかるヤマト。ここのヒョイッと持ち上げられるハックモンかわいくてすき。

 現実世界をリブートというコトは、こちらも何年か前の世界に時間を逆行させられる――のかと思いきや、
リブートが影響するのは「コンピューターなどの機械類が完全リセットされる」だけらしく、よくわからんちん。

 「それじゃ世界が大混乱で被害が計り知れません。僕は最後まで解決法を探します!」と光子郎は猛反対。
ちゃんと世界への被害を分析予想し、状況に対して具体的に動き出す光子郎はtri.6章の中では光輝かんばかりのヒーロームーブでステキ。

 ただ、「リセットされるのは機械だけ」ってのがやっぱハンパでよくないですね。
そのハンパぶりのせいで、他の子供達も「そこ妥協すれば助かるならいいんじゃない?」と無気力な現代っ子みたいなコトを言いだします。
リブートで最愛のパートナーを一度失うという辛い思いを経験したばかりのはずなんだから、
「どんな形だろうとリブートなんて許さねぇ!俺達の世界をテメーらの都合で好き勝手するんじゃねぇ!」と喧嘩番長みたいなスタンスでいてほしかった。

 他の子供達がホメオスタシスの案に対して「まぁそれでもいいんじゃない?」みたいな空気なので、
光子郎も内心「え?皆さんもっとこう、反応とかないんですか?」とか困惑してそうでした。


 自室でアレコレ調べている光子郎と、それを見守るテントモン。
ウーロン茶もバッチリキメて、無事に今回のノルマも達成しました。「tri.唯一の一貫性」と言えるかもしれません。

「前にも、こんなコトがありましたね…」と3章を思い出す光子郎に対し、
「すんまへん、ワテには記憶がないもんで…」とテントモンが返してしまったため、
リブートはちゃんとあったしデジモンの記憶は消えてるぞアピールをしてしまい、6章内だけでも描写がグチャグチャになります。
ここでボカシとけば超好意的解釈で「実はリブート後も普通に記憶があった」ルートにいけたのに…。



 一方その頃、デジタルワールドで崖から転落するも当然のように生きていた太一。無傷でした
近くには太一を助けてくれた西島先生の姿もあり、こっちは全身に傷を負い、腹から大量出血で死にかけです
そうはならんやろ。どう助けたんだ。
 
 2人が落ちたここはどこかと思いきや、たまたま攻撃で割れた地面の穴に落ちたのに、
偶然にも地下施設があり、そこにはなんと大輔たち4人の体が生命維持装置で保管されているという都合のよすぎる展開。

 「大輔!?」とカプセルに駆け寄る太一。……えっ、オマエ大輔知ってたの?
そして重傷を引きずりながら装置を操作する先生により、真実が語られます。

 大輔、京、伊織、賢の4人はイグドラシルの動向にいち早く気付き動きを起こしたところを襲撃され、行方不明になっていました。
4人が行方不明なコトは、自分のパートナーを救うためイグドラシルの手先となった姫川により、重要機密として情報が伏せられていたそうです。
…あの、それ「大輔たちがいなかった説明」にはなるけど、「太一たちが今まで大輔たちに触れなかった説明にはならないんだけど、大丈夫なんですかね…?

 ていうか、なんでタケルとヒカリが同行してないんだ。アクィラとアンキロが成熟期止まりじゃん
最大戦力がインペだけじゃ、そりゃ負けるわ。 …インペといえば、2章のあれはほんと何だったんだよ
こんな感じで、後付で新たな事実が発覚する度に摺合せができていない過去回との違和感が生じていくのがtri.の見所ですね。

 
 そこに現れる謎の男。さっきまで現実世界にいたのに忙しそうですね。もう話も畳まなきゃいけないもんね。
「イグドラシル is GOD. 人間 is うんこ」とかそんな感じの低レベルな煽りを繰り返した後で、大輔たちの生命維持装置を停止させてしまいます。

 大輔たちを救うには今からでも現実世界に転送するしかない。
しかし転送を実行するとこの施設は爆破されて太一と先生は助からない。
しかしイグドラシルは優しいので予備のカプセルを用意してくれていた。
あっごめーん、カプセルの空きが1個しかないからどっちかしか助からないわ~wwww

 …と、ジュラル星人やクライシス帝国もヒきそうなほどに回りくどい流れで、太一と西島、どちらかが犠牲になる状況に陥ってしまいました。
なおカプセルは6つあり、その内5つに人が入っているというホラー要素が仕込まれていますが、
よくよく見ると5人目として、恐らくきれいな方のゲンナイが入っているもよう。 そういうのをちゃんと説明しろ

 2人は言われっぱなしのまま、ただ謎の男を恨めしそうに睨み返すのみで、反論も、殴りかかるコトもしません。
いやなんかやってくれよ。見せられてる俺のストレスが晴れないだろ
別に「人間の愚かしさが招いた結果を突き付けられている」みたいな状況でもないんだから、「うるせぇバーーーーカ!!」とブン殴れば良かったのに。


 謎の男はそのまま姿を消し、取り残される2人。 
「装置には現実世界への連絡手段があるかもしれない」と先生から指示を受けて、カプセルの中を探る太一。
西島はカプセルを閉じ、転送を実行。太一に「お前たちの未来を勝ち取れ」的な希望を託し、息絶えてしまいました

 
 ここの、太一を手早く救う方向に仕向けた西島先生の一連の流れはかっこよくて好きなんですが、
既に重傷でボロボロの死にかけな上に、転送が終わる前にもうダメだったっぽいので、太一か西島かの2択を迫った意味がないんだよなぁ…。

 あ、ちなみにイグドラシルに協力してリブートを起こし、死んだパートナーを取り戻すべく狂気に走った姫川さんは、
前回ダゴモンの海らしきところに迷い込んだまま、今回は西島の回想に登場するのみでセリフもなく、どうなったかは一切描写されませんでした
ビビるわ。ていうか、制作にヒくわ

 ああ、西島先生とか姫川さんとか、「先代の選ばれし子供たち」の活躍を普通に見たかったな…。
ていうか、ここらへんでバイフーモンとかが颯爽と駆けつけてくれたらめっちゃ燃えたと思うんだけどなぁ。
伏線や筋立てがない? 他の展開にもねぇだろ。


 一方再び現実世界。

 ところでtri.、1章から「街中で暴れたら被害がヤバいからやめようね」という、
ディア逆の時点で大輔が当然のように配慮できていた問題を、太一の精神を追い詰めてまで懸念点の一つとして描いていましたが、
今回のオルディネモン戦、めっちゃ街に被害出しつつも、フツーに街で戦ってました

 一応、協力者の立場となったハックモンから「リブート実行まで街中でオルディネ暴れさせとくのもアレだし、誘導できない?」と相談され、
ヤマトたちも「おっ、そうだな」と今更になって世間体を気にしだします。
こんな、そこらへんのデジモンですらしれっと配慮できる問題で、仲間たちが一切気にしない問題で、太一は1章から思い悩んでいたんですね。

 オルディネモンの中にはメイクーモンの意識がまだ残っているらしく、
芽心に反応する習性を利用しておびきよせるコトになりました。

 芽心はハックモンに、「貴方たちは私たちの味方なの?」
「メイちゃんを助けてくれるの?排除する気なの?」などと質問を投げかけ、ハックモンも淡々と答えてくれます。
tri.では珍しく、視聴者的にも気になる内容をズバッと切り出してくれるので、2人に対する好感度が上がっていきます。 こ、こんな程度で…。
 
 あと、芽心って結局メイクーモンとも全然実りのある会話ができてなかったから、
初めて「誰かのパートナーではないtri.からの新デジモンとちゃんと話している姿」を見られて、なんかいいなと思いました。
誰かが予想してたけど、「芽心の本当のパートナーはハックモンだった」って未来、選んでほしかったなぁ…。


 そんなこんなでオルディネモンがまたきたので第二回戦。
…いや実際ビックリしましたね。
成熟期まではまた4体同時にバンクが流れて、ワーガルルモンだけ単独で映って、まさかそこでバンクが終了して、
トゲモンやバードラモンがそのままオルディネモンに向かっていったのは、正気とは思えない。
ていうか、戦いを2回に分ける意味がないんですけど…。


 説明する時系列が既にグチャグチャで申し訳ないですが、オルディネモンに対しては自衛隊だか何だかも出動し、戦闘ヘリや戦車が応戦しています。
最初に自衛隊がオルディネモンを攻撃した時に、空の発した「ヒドい!デジモンを攻撃するなんて!」とかいうセリフが最高に意味不明でヤバいですね。
お前、前回の太一とかの話聞いてた? 早くも現実世界へのリブート効果が表れて記憶が消えているのでしょうか。


 「人間の兵器VSデジモン」という構図はtri.ならではの構図で、怪獣映画的な良さもありますね。
ただ残念だったのが、この戦いで、選ばれし子供たちのパートナーと、自衛隊が共闘関係にならなかったところ。

 ここで、「あのデジモンたち、我々に協力してくれているのか?」「人間の味方なのか…」とか
「ここはワタシが引き受けるから、その隙にあそこを狙って!」「了解!」とか、そういう展開あればなぁ…。

 「デジモンはただ危険な存在じゃない。良いデジモンだってたくさんいる」とアピールするのも子供達の願いの一つだったはずだから、
戦いを通じて信頼を勝ち取る展開、なんてのは王道だし、見てて気持ちの良いモノだと思うんですけどね。




 一方、ヒカリはお得意の電波キャッチで謎空間にてテイルモンやメイクーモンと会い、事態解決のきっかけを得ます。
光子郎に連絡して分析してもらったところ、なんかメイクーモンの中にデジモンすべての記憶が保存されていたそうです。なんで?
また、メイクーモンは本編であまり描写されなかった本来の優しい性格が封印されており、
そこを解放することができればオルディネモンの闇の力も弱まり、勝機が見えたり見えなかったりする、とのコト。

 さて、というわけでメイクーモン内のデータにはロックがかかっている。ので、パスワードを入力してくださいというギャグ漫画日和みたいな展開。
「芽心さん、何か心当たりはありませんか!」と周りからも問い詰められる芽心。
あれこれ試したあとに見つけた正解は、芽心がメイクーモンに初めて意味を教えた言葉、「だんだん=ありがとう」でした。

 …ところでこれ、データをロックしたのはメイクーモンじゃないんですけど、
なんでメイクーモンにとって思い出となるワードが選ばれてるんでしょうかね?


 「DANDAN」という脆弱性が心配なパスワードを入力し、全てのデジモンに記憶が戻っていきます。
うーん雑だなぁ。このあとのシナリオ解説も雑でいいか
はいあとはまぁ、テイルモンがホーリードラモンになったり太一が戻ってきてオメガモンになったり
唐突にオメガモンマーシフルモードになってメイクーモンをブッ殺して芽心は田舎に帰って終わりでした。


 何はともあれ、メイクーモンを普通に殺したのはドン引きでしたね。

・今までの戦いが全部茶番
・芽心かわいそうすぎるだろ
・イグドラシルやホメオスタシスに抵抗した意味ナシ
・西島先生に託された未来を拒否
・オメガモンマーシフルモードの存在意義はどこ…?
・パラディンモード「俺なら浄化できたんだよなぁ」
・デジモンアドベンチャーtri.という作品を通じて、9人目の子供とパートナーという可能性を潰した


 ヤバいです。
リブートの件といい、なんでこの作品は自分から自分の首を絞めるような評価の下げ方が大好きなんでしょうか


 最後に、鳥取に帰った芽心に太一が無駄に赤面しながらしどろもどろに話して言葉につまったあたりで、
見かねたアグモンが「ボクたちはずっと、仲間だよ!」的な事を言ってシメるのですが、
6章に至るまで02勢に触れなかったお前らが何を言っても無駄やぞ


 そんなこんなで、子供達は全然成長してないし新たな仲間も殺しちゃったけど、
「強大な敵であるオルディネモンを倒す」というトロフィーだけは獲得し、なんとなくの「やり遂げた感」は出せたので、
見終わったあとはそこそこ「おっ、とりあえず一区切りついたな」という気分にはなれましたね。
もちろん振り返ると話は支離滅裂なので、今いい気分でいられている人は、うっかり過去の話を見返したりしない方がいいかもしれません。


 んじゃ後は適当にピックアップ。


作画
 最後だけあってマトモな方だったけど、結局キャラデザが気持ち悪いから詰んでるんだよなぁ。
ただ全体的にシーン流用やバンク垂れ流しでかなり尺を稼いでたから、「こんだけやって、あの程度なのか…」って感想。
今回、アグモンのブッサイクな正面顔がやたら多かった気がする。なんで長方形じゃなくてあんな縦レモンみたいな型になるんだろう。


音楽
 今回初めて音楽の方を意識しながら見たんだけど、なるほど確かにけっこういい。
画面に見るべきところがなくセリフにも内容がないシーンが多かったので、音楽に着目するのは憩いの場でした。

 でも一応全部バージョンが違うとは言えButter-Flyを4回も流してきたのは流石にやりすぎ。
確かにtri.は無限大な夢の後の何もない世の中だけど、和田さんの死に頼って安易に流さないでほしい。

 今回のEDとなる合唱版Butter-Fly、キャラクターの歌う順番は意味不明ですが、皆さん歌が上手でいいですね。
取ってつけたようなパートナーとの呼び合いパートは失笑レベルですが、
あそこで9組目として「メイちゃん…!」「芽心ー!」とか言わせるならやっぱメイクーモン殺しちゃダメでしょ。


オメガモンマーシフルモード
 当初は戦闘シーンすらないんじゃないかと思ってたけど、一応ちゃんと戦いました。
オメガモンがなんか急に他の仲間からも力をもらって変化した姿で、子供達が何の反応もしなかったのが最高にtri.って感じ。

 tri.、今までの究極体進化も「完全体で苦戦したワケでもないのに究極体に進化する」っていう必然性のない進化を繰り返してたけど、
それはオメガモンマーシフルモードも同じで「別にオメガモンのままでも勝てそうだったけどなんか条件満たしたからなれたわ」みたいなノリ。
 あんだけズタボロにされてた5章の内に覚醒しろ。
 
「オメガモンでただ戦うだけではオルディネモンの中のメイクーモンを助けられない!
 だがマーシフルモードならば、メイクーモンを助けられる!」…とかそういう展開のための形態かと思ってたけど、普通にブッ殺してて草も生えない
何のために出てきたんだろう。この展開に疑問を抱かず「あ、話できた?じゃあこれでいいよ!」で世に送り出せるのがtri.なんですね。

 アクションはそこそこあったけど、ディア逆のパラディンモードに勝るとも劣らない微妙っぷり
虞玲刀(大爆笑)が光り輝きだした時は「おっ、やっと断空光牙剣みたいなハイパービームサーベルをやってくれるのか!?」とか思ったのに、
結局「刀身がそのまま光るだけ」というガッカリ仕様。
一方で牙瑠々砲(仮)のビームはビュワンビュワンとムチのようにしなったりと、なんかこれもうわかんねぇな。

 とにかくまぁ、別にカッコよくもなんともなかったし、必要性も感じられなくてまさにtri.を象徴するキャラ
ちなみに発案者はtri.側じゃなくて、なべけん側らしいです。ハハハ。
 

芽心
 ただただ可哀そう。
 tri.の諸悪の根源みたいに言う人いるけど、俺は芽心も、というか芽心が一番の被害者だと思ってます、
 空は恐ろしいほどいいトコないし、ミミはワガママ分だけ強化されて、ヒカリも都合のいい電波なので、
 相対的に見てtri.の女性陣では一番魅力的だと思いました。
 ……こういう「他を下げて上げた風に見える」的なところも、嫌われる一因なのかもしれない。
 デザインは上手く「他の3人にはない要素」を揃えて9人目として埋もれない見た目だったから、もっといい作品で出会いたかった。


メイクーモン
 こっちもかなり可哀そう。
 せめて暴走を始めるのは3章ラストあたりにして、もっと仲間の期間が長ければよかったのに…。
 結局、人格が一番マトモなメイクーモンはネクオダのDLCイベントでした。


アルファモン
 最後出てなくて草。1章でクワガーモンを握りつぶしたのは何故なのだよとかを問いただせるレベルですらなかった。


感染デジモン
 何だったのコレ。


丈の彼女
 別にEDのワンカットとかで軽く出すくらい可能だろうけどtri.だし出さないだろうなと思ったらやっぱり出ませんでした。


姫川さん
 こんなに末路が雑なキャラ、今までのデジモン作品でも見たかどうか怪しい。
 一応6章で全デジモンの記憶は元に戻ったみたいだけど、バクモン以前に姫川さんが消息不明じゃなあ。


子供たちの進路
 (元々どうするつもりだったのか分からなかったけど)太一は予定を変更して予備校に通い出した模様。
 世界をつなぐ外交官を目指すだのどうこうと聞いたヤマトが
 「デカいなあ。じゃあ俺は宇宙だ」などと言いだし、よし、これで宇宙飛行士の未来を選んだな!
 なお1章のパンフによると「ヤマトが宇宙飛行士を目指すきっかけになる流れがtri.最大の山場」らしいので、tri.最大の山場はここらしいです


02組
 雑に回収されたあと「病院に搬送された」の一言で全てを片づけた感出してたけど、ところでパートナーは…?


謎の男
 まさかの勝ち逃げ。去り際に「次はディアボロモンか、デーモンか…」などと続編フラグまで立ててたのがマジカンベンしてほしい。
 このキャラクターよりも、このキャラクターをよしとしているtri.そのものが不快。


デジタルワールド
 メイクーモンから「記憶」は戻ってきたけど「世界」そのものはリブートされたままなんですが、それは大丈夫なんですかね…?


リブート
 「記憶がなくなったはずなのに、前とあまり変わらないな?」
 「もしかすると、どこかにバックアップがあるのかもしれません」とかの伏線まいとけばよかったのに。


選んではいけない未来
 tri.でした。



 お疲れ様でした。



コラムトップに戻る
サイトトップに戻る