デジモンコラム
「デジモンアドベンチャーtri.第3章」見てきた


 公開日:2016/09/25



 公開日初日の朝一で見てきましたので例によって軽い感想です。ネタバレ含みます。


 
 個人的には「2章よりは良かった」と思いました。
まぁ「話が動き出した!」…ってだけで、まだまだこの先どうなるのかは分からないし、
劇場作品としてこれ単体でも満足できるようなつくりではないものの、tri.を2章まで見た人には良い繋ぎだったのではないかと思います。


  
 今回も冒頭は「平田さん呼んでるならナレーションしてもらえば?」と思わずにいられない、文字が見辛いあらすじから始まります。
ちゃんと「アバン」のBGMも使って、デジアドの形式をリスペクトしてもいいんじゃないかなぁ。

 突如機体に異常が見られるもマニュアルで緊急着陸を成し遂げた飛行機パイロットの有能ぶりが印象的ですが、
それはさておき太一たちの通う文化祭の片づけシーンに移り、
「ミミちゃんのおかげで盛り上がったね」「私たちもあの衣装着ればよかった」と、クラスメイトから2章のフォローが入ります。…2章の内にやってほしかった。

 
 「レオモン殺害罪」という重いんだか軽いんだか分からない罪を背負い逃走したメイクーモンと、残された芽心。
芽心はメイクーモンのコトもレオモンのコトも両方を背負ってかなり辛そうですが、
8人の選ばれし子供達は芽心を気遣ってるのか「まぁレオモンだし…」と思ってるのかどうか、特に気にせず芽心を励ましてくれます。
なんか、「親睦を深めよう!」って目的があった2章の時より3章の方がちゃんと各キャラと芽心が絡んでるような?
 メイクーモンは最終的にどう着地させるのかまだまだ読めないキャラですが、
芽心がなんかずっとフビンなので、最終的には「新しい選ばれし子供たち」として平和に戻ってこられるといいなぁ。


 そして今回のシナリオで目立つのはタケルとパタモン。
今までの予告や宣伝の時点でバレてましたが、パタモンが感染してしまいました。
あらすじでもバラされている通り感染の原因はこれも全てメイクーモンって奴の仕業なんだですが、
恐らくパタモンはエアーショットで空気を大きく吸い込むので、真っ先に空気感染してしまったのでしょう。
(2章の温泉で腹膨らませて浮かぶシーンが怪しい…?)

 しかし、先にメイクーモンが原因だとバラされているせいで、
終盤で「メイちゃんのせいなんです!」「な、なんだってー!?」とかやられてもなぁ…。


 この「パートナーが最初に感染してしまった事態」に立たされたのがタケルというのはとても良い采配でした。
タケルは02、triと成長するにつれて掴みどころのない無敵キャラオーラを出していましたが、
「パートナーデジモンは本当に大事なのでそこに問題が起きたらヤバい」のは選ばれし子供共通の弱点であり、
各キャラに葛藤ドラマをつくる時、精神的に弱点の少なそうなタケルを説得力のあるピンチで襲うならこれが最善策だったと思います。

 というかそれ以前に何故タケルなのかと言えば、
勿論かつて「デビモンとの戦いでパタモンを一度死なせてしまっているから」というのがあるでしょう。
パートナーを一度失った辛さを知っているからこそ、タケルなら二度と同じ過ちを繰り返させまいとするはず。
ただ、何故か3章の本編では結局「デビモン戦」については一切触れてくれなかったのが意外…というか、残念でした。
(同じ3章で空が芽心に「昔アグモンはスカルグレイモンへ暗黒進化したコトがある」とか言ってたから
 少なくとも「デジモンアドベンチャー」はちゃんとこの世界でも経験した過去のはずだから、触れてくれりゃあよかったのに)


 タケルの葛藤自体はいいシーンだったと思いますが、動揺があったとは言え「タケルってこんなに他人を頼れないキャラだったっけ?」とか、
「せっかくパタモンを隔離したのにその後普通に他の仲間と会わせたらイミねーだろ!!」とかのツッコミどころはありました。
そりゃあ、ずっと一緒にいるよりは一時的にでも離した方が感染確率は下がるだろうけど…。


 詳しくは実際に本編を見てもらった方がいいので割愛しますが、3章のパタモンは凄くよかったです。
一見アホなようで物事の神髄を見据えてて、相棒の想いをしっかり汲むパートナーの鑑でした。
3章のPVでは目立つ割に妙に太くてブサイクなシーンばかりでアレでしたが、全体としては所々かつての可愛さを取り戻していました。

 こんな立派なデジモンがtri.でもいずれあの「動く勝率0%」でお馴染みセラフィモンに進化するのかと思うと不安ですが、
tri.の(個人的に思う)やるべきコトの一つに「史上初!セラフィモン大勝利!」というのがあるので、そこはがんばってほしいです。
(でもセラフィとホーリードラは02夏映画で消化済みだから、あまり活躍に期待できないか…?)


 同じく今回の主役、というか究極進化枠だったのが光子郎&テントモンコンビ。
デジモン世界を巻き込むヤバい事態となり、光子郎の「知りたがる心」があんなに荒むのはムリもないと思いますが、
そこをなんとかテントモンがたしなめるというのも、付き合いの長いパートナーならではなのでしょう。
 
 そんなこんなでテントモンは土壇場でヘラクルカブテリモンに進化し、
(視聴者的にも)想像以上の速さで感染拡大して敵にまわってしまった「7体のパートナー+メイクラックモン」を1体で食いとめる大活躍でした。

 …まぁ、「ヘラクルなのに例によって超スピードが活かされないな」とか「必殺技撃てよ」とか
「せっかく進化したのに防戦一方かよ」などと初進化の活躍回としてはモヤモヤするところもあったものの、
「リアルワールド最後の希望」というポジションをもらえたのはオイシイかな。

 ただ、ヘラクルへの進化ロックはテントモンが戦闘に入る前に光子郎との会話で解除されてしまっていたのか、
前回の2章に引き続き、「ピンチで奇跡の進化が起きた」というカタルシスがなかったのが残念。
むしろ前回はパートナーを激励するくだりがあった分、なんか一人であっさり究極進化できてしまった今回はさらにあっけないものでした。

 劇中で「究極体への進化はパートナーの成長が鍵(意訳)」とアピールしている割に、
なんか「2人で体得した最高の進化」というよりは、「パートナーのせいで今まで使えなかった隠し技」って感じで、イマイチ燃えないんだよなぁ。
 

 今回主人公たちの戦闘は長いのが1回で「パートナーデジモン総がかりVSメイクーモン」という構図だったんですが、正直つまんなかったです。
というのも、ヒカリちゃんの体をのっとって作画を崩壊させたホメオスタシス曰く
「メイクーモンヤバいんで、あいつが今度悪さしたらもう世界リセットするんで、ハイ、ヨロシクゥ!」とのコトでした。
ただ、芽心のパートナーだったメイクーモンを殺す訳にもいかず、具体的に何をすれば勝利なのか、
登場人物にも視聴者にもサッパリ分からないまま、ひたすら人間界へ来ないように時空の裂け目へ押し戻す地味~な戦いでした。
「メイクーモンを元の空間に戻して一旦ゲートを閉じる」とかの目標すらなく、
ひたすら出てきたりひっこめたりで、何をどうすればいいのか誰も分かってないようなひどい有様。
 しかもメイクーモンは進化してメイクラックモンになっても小柄なので、そいつに多数でかかっても見栄えが悪いというオマケ付き。

 2章のように「終始何が起こってるのか分からない」ってコトはなかったんですが、
「取っ組み合いが続いてるのがずっと分かる」ってだけで、エンジェウーモンのお尻ぐらいしか見所がありませんでした。


 解析で遅れてやってきた光子郎により「ヤバいデータをなんとかするポイント」が用意され、
そこにブチこめばメイクーモンもパートナーデジモンも助かるぞというゴール地点が作られたのがありがたいですが、
光子郎の対策もむなしく、パートナーデジモンたちが次から次へと感染していったせいで
気付けば「ヘラクルVS全員」という構図になり、ヘラクルカブテリモン渾身のディフェンスで人間界は守られたものの、
「デジタルワールドはリセットされてパートナーデジモンたちもあちらの世界に戻って記憶を失う」、という実質のボロ負けでした。


 この勝負、光子郎が来るまでちゃんとした勝利条件がないグダグダ試合だったのも悪いんですが、
それ以上に「選ばれし子供たちの舐めプが酷すぎる」のがすごく気になりました。
メイクーモンに対して成熟期軍団で立ち向かうまではまぁいいとしても、
数体がかりでずっと苦戦を強いられているというのに、特に何の対抗策もないまま、そのまま戦おうとします。
「メイクーモンを取り押さえる」コトは劇中でも世界の存続をかけた最重要目的として語られた割にコレなので、尚更違和感があります。

 メイクーモンが完全体「メイクラックモン」に進化しても、成熟期のまま闘い続けたのは流石にどうかと思いました。
状況的にもデジモンアドベンチャー的にも「ならこっちも完全体に進化だ!」となるはずです。

 頑なに超進化を拒むので「上位進化には条件があるのか?」と思いきや、
しれっとテイルモンがエンジェウーモンに進化したり、グレイモンも終盤思い出したかのようにメタルグレイモンに進化するので分かりません。

 メタルグレイモンはかなり終盤まで味方側として頑張っていたものの、
カブテリモンを残してメイクーモンによって感染させられてしまった後、しれっとウォーグレイモンに進化して立ちはだかる屑でした。

 パートナーデジモンたちは選ばれし子供達にとって良く言えば一心同体、悪く言えばスタンドのような存在だと思っていたのですが、
どうにもtriは「進化」に子供側の意志が関係なさすぎて、見てる側としてもノリきれないというか、チグハグな印象を受けます。
お前クロスウォーズ3話でタイキによって強制デジクロスされたドルルモンかよ(何度でも言う)。

 せっかく2章で「ヴァイクモン」「ロゼモン」という新たな戦力が加わって、
3章でヤマトも「(この調子で戦力が増強されれば)お前(太一)も楽になんじゃねーのかよ」とかツンデレゼリフを言っていたのに、
コトもあろうに世界をかけた戦いで舐めプをするのはいかがなもんでしょう。
もちろん全力で進化すれば勝てた保証はないですが、「できるんだから、やらなきゃいけない場面」でした。
それを描けないのなら、どこかしらで「上級進化には制限がある」とか明言してそれを順守してくれないと、「展開や作画の都合」でしかないでしょう。



 3章の気になる点と言えばもう一つ、なんといっても「アグモンの頭が悪すぎる」点だと思います。
tri.のパートナーはもともと(大きくなった子供たちとの対比を誇張したいのか)アホな幼稚園児レベルにまで知能が落とされていましたが、
2章で丈と向き合ったゴマモンがしっかりしていたように、3章ではパタモンやテントモン、他にもピヨモンやテイルモンたちも徐々に
「デジモンアドベンチャー当時レベル」の知能を取り戻してきてくれているのが嬉しいところでした。

 ただ、アグモンだけは少し難しい言葉を聞けばすぐ「◯◯っておいしいの?」とか聞いてくるアホのままです。
元々アグモンはどちらかといえば太一同様に全体や物事をしっかりと考えるリーダータイプだったのに、
セイバーズ版とサイスル版のアグモンの悪い所だけを誇張して首を絞めて坂本千夏さんに声をあててもらったのがtri.アグモンの印象です。
ただアホってだけならいいんですが、3章だとシリアスな場面でもお構いなしにアホ台詞をぶっこんでくるので、
場を和ませるムードメーカーではなく、もはや不快要素です。
テイルモンはあの2回目の場面では問答無用でネコ腹パンチをブッこんでくれてもよかったと思います。


 tri.は全体的に「成長期でアホな分、進化後の活躍で取り戻すぜ!」ってスタンスなのを感じますが、
どうにもtri.のデジモンは進化すると全然喋らなくなるので不気味な上につまらない部分があります。 
しかも必殺技を全然撃たないので快勝もなく、「進化してバッチリ活躍した!」と記憶に残らないので、進化自体にあまり魅力を感じません。

 3章ではメタルグレイモンの他にもエンジェウーモンなどに進化演出が描き下ろされましたが例によって変なキメポーズばかりで、
「これなら無印の進化バンクをもう一度大画面で見られた方がよっぽどいいな」という考えが未だに翻りません。

 キメポーズと言えばアトラーとヘラクルはけっこうカッコよかったんですが、
別に無印オリジナル版やPSP版究極体バンクに勝るとは思わないレベルで、あまり特筆するほどでもなかったです。



 終盤の展開、つまりデジモンたちを失ってからデジタルワールドへ殴りこむのを決意してからは、多少急ぎすぎ感はあったものの、
もし「太一たちがゲートを開いて終わり」とかだったら視聴後のモヤモヤ感が凄かったと思うので良かったと思います。


 「(久々に来たデジタルワールドが)全然変わってな~い」とか言いつつデジアドの頃と全然違うのがツボでしたが、
それよりお前らなんで学校の制服で来るんだよ!見栄え悪いしまず動き辛いだろ!
tri.は劇中でもけっこう私服として「無印当時っぽい服」を着てたりするから、そっちで来てくれればよかったのに。

 デジタルワールドに入るなりロイヤルナイツがま~~た内ゲバ起こしてるのは不安要素ですが、
アルファモンの時といい光子郎はナイツが出てきた時はすぐアナライザーで調べようとするし、あっさり情報を出すアナライザーにも笑いました。
(でも、何故あれほど謎の強敵だったメイクラックモンは調べようとしなかったのか)


 そして思いのほかあっさりと、記憶を失い幼年期となったパートナーたちと再会。デジモンいないと話転がらないからね、しょうがないね。
 世界の「リブート」というのが「スタート地点を同じくしてのやり直し」なのだとしたら
リセットされても思い出こそ失えどパートナーデジモンは既に選ばれし子供たちのコトを知ってるはずなんですが、まぁ今後を見てから気にします。
(テイルモンみたいなパターンかもしれないし)
 彼らは今後記憶を取り戻すのか、新たな関係を築いていくのかも気になりますが、とりあえず太一はアグモンをマトモに育ててね!

 ヒカリのホイッスルをニャロモンではなくトコモンが持ってたのも笑い所でした。
ニャロモン(テイルモン)はあれだけ大事にしてたホイッスルを02の時にホーリーリング同様になくしやがるから、別の奴が持ってた方がいいな!


 そんなこんなで次回へ続くって感じで、やっぱりデジタルワールドに来ると嫌でも話が転がりそうで良い引きだと思いました。
他にも言ってる人がいましたが、3章のここの方が1章より納得のできる「再会」だったかな。


 今回のED曲は情報のとおり、ヤマトの所属するバンドの歌う僕にとっと…いや、「僕にとって」。
案の定「別に今回ヤマトが歌う必要ないよね」って展開でしたが、単純に良い曲だし、やっと「tri.発の新曲」が来たのは嬉しい。
ED映像が2章のような寂しすぎる仕様じゃなかったのも安心。もう一枚絵をひたすら誤魔化したのをお見せさせられるのは嫌だぜ。



 他にも「なんでタケルとヒカリちゃんは大輔たちをスルーして賢の家にだけくるんだ」とか「姫川さんいつもニヤけてんな」とか
「メイクーモン、芽心と初めて会った頃からメイクーなのかよ!どうしてくれんだよこのわざわざ用意された手抜き色違い進化前をよォ!」とか、
「お前ら姫川さんが持ってきた黒いD3に反応しろよ!」とか「謎の男、本当に謎の男かよ!」とか色々残された謎もあり、
個人的に3章はなかなか楽しめました。
進化や戦闘シーンについての不満は変わらないし、過去作とキャラや設定の整合性がとれてないのは気になりますが、
3回目にもなったからか作る側も手慣れてきて、見る側としても慣れた気がします。


 2月に来るという4章では、「個人的にPSP版究極進化バンクが一番好きな奴」が登場し、
敵としては「必殺技に殺傷力が皆無で部下を一人爆撃指令しただけで結局は自分も瞬殺された鉄クズ」が再登場するらしいので楽しみです。




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