デジモンコラム
「デジモンアドベンチャー02 THE BEGINNING」見てきた


 23/10/28




 前作「デジモンアドベンチャー LAST EVOLUTION 絆」から早くも3年半もの月日が…3年半!?!?!?!?
ともかく、ついに後輩である大輔たち02組に再び焦点をあてた新作映画
デジモンアドベンチャー 02 THE BEGINNING」が2023年10月27日に公開となりました。

 そんなワケで、例によって公開初日の朝イチに見に行ってきたので、
今回はネタバレなしの「ざっくり感想」、ネタバレありの「良かったところ」「悪かったところ」「総評」を書こうと思います。


 というコトで軽く感想だけ聞いて参考にしたいぜという人に向けて俺の所感を言うと、
まぁまぁ良かったんじゃない?」という感じ。

 ぶっちゃけてしまえば俺はいつまでデジモンアドベンチャー引き摺ってんだよとゲンナリしてる側のファンなので、
今更「02組にはアレコレこうこうやってほしい!」みたいな要望もなくて、
良くも悪くもフラットな気持ちで見に行った感じですが、

・せっかく用意されたのに出番の少なかった02新キャストにちゃんとした出番が与えられた
・物語のカギを握るルイとウッコモンのドラマがイイカンジだった
・本編を見終わった後にラーメン屋に行きたくなった

 …と、個人的には達成してほしい3つのミッションはどれもクリアしてくれたので良かったです。

 なので、「大輔たちの活躍をまた見たい!」って人たちにはオススメできるのだけど、
「ラスエボの後の世界はどうなってしまったのか」ってのが気になってる人にはその点全然ダメなので、
ここでまぁまぁ今作への評価は分かれるかなあ、って気もします。

 ラスエボ感想で各作品に点数をつけていたので、あえて今回も点数をつけるとするなら…60点くらいかなぁ。



以下、ネタバレあり



◆良かったところ


デジモンアドベンチャー02組に焦点があてられ、久々の活躍を見られた

 いやまぁ、02の映画と銘打ってるんだからそりゃそうだろってハナシではあるんですが、
なにせtri.とラスエボで「7回連続でデジアドの映画ばかりやっていた」後なので、
ちゃんとその後輩である02組が改めて主役となった作品がつくられたのは良かったなと思います。
(02メインというコトで、世界各国の子供たちも成長した姿でちょっと映ります)

 ラスエボの時点では正直全然ピンときてなかった02新キャストも、
その後もキャラソンやらイベントやらを経ていく度に本家の雰囲気をモノにした演技になっていて、
今作だと特に大輔役の片山福十郎さんの声が、
「あの大輔が大きくなったらこんな感じになるんだろうなあ」って納得のできるそれになってて良かったです。

 大輔はラーメン屋の店員として本格的に修行を始めていたりして、
他のキャラも02最終回で就いていた職業に向かった道を進んでいるし、
京と賢の関係も進展してる描写が挟まったり、「ちゃんとあのラストへと向かっている」描写になっていました。

 久々に主役となった大輔、賢、京、伊織、タケル、ヒカリは全員が頼もしい存在となっており、
余計なヘマをしたりするコトもなく、問題解決に向けて能動的に動く有能キャラ揃いになっています。
問題が起きればすぐに対応する、気になったコトがあればすぐに突っつくムーブの連続で、
今作の話はラストまで非常にテンポよく進んでいきます。


 あとついでにココで言っておくと、作画は終始良かったです。
 進化バンクが当時再現になっているのも人によってはメチャクチャ高評価ポイントだろうけど、
個人的には「どうせやるなら新しいコトをやってほしい」タイプなので、正直そんなにな感じ。

 せめて、ジョグレス進化のシルフィーとシャッコウは虚無回転パートだけでもなんとかしてほしかった。
新規作画でも律儀に改めて盛大に理不尽にブッ壊されるインペのお城は笑ったけど。


ゲストキャラであるルイとウッコモンのドラマ

 今作の鍵を握る青年「ルイ」は親から虐待を受ける幼少期を過ごし、
4歳の彼が失禁を理由に冬のベランダに放置されているところで「ウッコモン」と出会いました。

 ウッコモンは「大いなる存在(ホメオスタシスらしい)」とのつながりを持ち、
それによって「人の願いを叶える力」を持つというヤバそうな存在でした。
ウッコモンのおかげでルイは素晴らしい日常を手に入れたかと思われたが……というのがストーリーの根幹です。


事前に公開されていたカットの1枚。
「顔がね…」っぷりがよく出てて面白いと思ってたら、本編でもまぁまぁヤバいシーンの顔だった。



 このテの能力が出てくる時に定番の「歪んで願いが叶えられてしまう」系のお話であり、
今作は尺の多くを「ルイとウッコモン」に割いています。

 そのせいで今作ではまぁまぁ暗いシーンが多くなっているワケですが、
おかげで2人が可哀そうなのはよく伝わるし、
すれ違ってしまった2人が改めて「会話」する機会を得て和解を遂げて、
最終的にはそんな2人が無事に救済されるお話だったのは良かったです。

 ハリメンタルやらtri.やら、「ゲストのヤバイパートナーをマーシフる」話も定番になりましたが、
今作は「ちゃんと可哀そうだし、ちゃんと助かる」のがポイント高いです。
ザビギの内容は一言で表すと「きれいなtri.」と言えるかもしれません。
(そういえばtri.展開中、「大輔たちならもっとあっさり解決してたんじゃないか」的なコト言われてたなぁ…)

 あと、ウッコモンはちゃんと本編でも軽く一度「ウンコモン」呼ばわりされてて良かった。



◆悪かったところ


展開があまりにも淡々としていて味気ない

 先述した通り、今作は「ルイのパートナー・ウッコモンをなんとかする話」なのですが、
本編が始まってすぐに大輔たちはルイと出会うコトになり、
「ひたすらルイからコトの経緯を聞いて、後はウッコモンを倒すだけ」で、波もクソもない話になっています。

 ルイが大輔たちに心を開くまではちょっとかかったものの、
ルイは戦力を持たないので敵対するような展開はなく、状況が大きくひっくり返されるコトもありません。
なまじ、大輔たちが問題解決に向けてシッカリしすぎているのも相まって、
やろうと思えばテレビサイズの30分枠でも収まりそうな小規模の話になってしまっています。

 「こんな時に太一たちや他の子供はどうしたんだ」というツッコミを与える隙もなく、
劇中でもルイと出会ってから半日くらいで事態は解決してしまうレベル。有能なのは間違いないけども…。

 尺がラスエボより10分短くなっているのも響いているのか、
02組の醍醐味であろう「日常をデジモンと共に過ごす描写」もあまり描かれておらず、
全員がひたすら問題解決に向き合うせいで「キャラクターの個性が弱いのでは?」という印象もあり、
まっとうに活躍こそしたけど、「02の大ファンだとむしろ物足りなく感じるかも」とも思いました。


敵がショボすぎて戦闘が盛り上がらない

 今作の敵となる存在は、なんとウッコモン1人しかいません。
終盤、ウッコモンはビッグウッコモンとかいう悪い冗談にしか思えない名前の究極体に進化しますが、
巨大なウッコモンの頭がバッカルコーンのように割れて(やはりクリオネモチーフなんでしょうね)
その中から伸びてきた「無数の巨大触手」くらいしか主なターゲットとして登場しません。

 しかも、ビッグウッコモンは直接的に自我を表してくるコトもなく、ただの物言わぬ触手オブジェです。
そりゃまあ市街地に超巨大な怪物が出てきたので被害規模自体はそれなりにあるワケですが、
そんな触手相手に立ち向かっていくインペリアルドラモン、シルフィーモン、シャッコウモンたちは、
作画自体は本当にずっといいんですが、マジで全然盛り上がりを感じられません。
必殺技の連続コンボでしれっと強さを見せつけるシャッコウモンとか、部分的には良かったけど…。
(敵は東京タワー上空にいて、別にまだ全然攻撃とかは来てない内から
 無駄にビルの間を飛び回ってダイナミックな作画で最終決戦らしい迫力をつけようとするインペが涙ぐましい)


 さらに、ラストではビッグウッコモンも
「ウッコモンとの対話は済んだから、あの抜け殻はもう潰しちゃっていいよ」くらいのノリになるので、
気合いを入れて放たれる劇場版だけど劇場版じゃないバージョンのギガデスも、なんだか虚しく映りました。

 敵が不足しすぎなばっかりに終盤の盛り上がらなさも残念でしたが、
個人的には序盤の「東京タワー上空にルイを送り届けるためだけに、バンク付きでパイルドラモンに進化」というのも、
展開のあまりの無駄遣いっぷりに「ウソでしょ…」とガックリ来ました。
超白銀合体ゴッドシルバリオンじゃないんだから、もっと「戦わなければならない場面」で拝みたかった…。


 ところで、今作に限らず近年のデジモンの映画って
「倒さなければならない敵」ではあっても「倒してスカッとする敵」は全然出してくれないのが気になっています。
この点に限って言えばtri.もラスエボもザビギもどれも同レベルなんだよな…
(tri.は謎の男をブッ倒してくれればそれでよかったのに)


新しい進化形態がなんにも出てこない

 まぁ出なさそうだなとは思ってましたが、なんも出ませんでした。
フツーに事前公開された楽曲ジャケットどおりにインペファイター、シルフィー、シャッコウが最大戦力で終わりました。

 もちろん、無駄な進化形態を増やされてもそれはそれでイヤですが、
今作は何故新しい進化が出なかったかと言えば「主役組が新進化を得るほどのドラマがなかったから」でもあるので、
進化のなさがそのまま「主人公たちの扱いの軽さ」の証左になってしまった感じがあります。

 せめて、シルフィーとシャッコウがヴァルキリとヴァイクになるくらいはしてほしかったなぁ。


話が全然「ラスエボ」の続きになっていない

 これが個人的に一番かなしかったところ。
前作・ラスエボはtri.ほどのアレな作品ではなかったにしても、
唐突に「人間が大人になるとパートナー関係が解消されてしまう」という謎設定をブチ込み、
デジモンアドベンチャーのシリーズディレクターであった角銅氏を自ら降板させるに至りました。

 そんなクソほど厄介なパー関設定を持ち出してきたラスエボに対して、
根幹スタッフを同じとする今作がそれらに向けてどういった補足や解答をしてくるかは、
展開を追い続けているファンにとっては間違いなく注目ポイントであったかと思われます。

 …が、今作、そういった自分らから言い出した面倒な設定には、ビックリするほど触れませんでした。
勿論、続編ではあるので「太一や光子郎は今も忙しそうにしている」的な情報は少しだけ入るのですが、
視聴者が気になるようなアンサーは劇中からなんも出してくれませんでした。


 しかも、今作では「ウッコモンがルイの願いを叶えるために、選ばれし子供という概念をつくった」とされています
(今作のとっつきにくい副題「THE BEGINNING」要素はこの設定由来なんでしょうね)
されてはいますが、劇中でも「それが本当かは検証しないと分からない」などと言われ、
ビミョーに言葉を濁してくるというか、逃げ場をつくっているような及び腰な姿勢が目立ちました。

 まぁ「始まりはウッコモンだった」にしても「築きあげた絆は俺たち自身によるものだぜ」という話になっていったので、
今作を見てても別にそこらへんはどうでもいいっちゃいいのですが、
でもこれは前作でメノアや太一たちを散々苦しめた「大人になるとパートナー関係が解消される」設定とは
いくらなんでもハナシが食い違ってないか?というのもけっこう気になってきます。

 ウッコモンは「いつまでもルイと一緒にいたい」「友達もつくってあげたい」と言っていたので、
別に「大人」という不明瞭なタイムリミットを設ける必要もないはずなので、よく分かりません。
tri.のリブートとの整合性はともかく、直近のラスエボとも違和感を生じさせているのはちょっとどうかと思いました。


 なんていうか今作、時系列は当然「ラスエボの後」ではあるんですが、
ドラマ的には02本編のすぐ後、例えるならディア逆くらいのタイミングの方がシックリくるくらいの話なんですよね。
でも実際にはラスエボの後なんだから、もっとラスエボの後である自覚を持ってほしかったです。



まとめ

 「メインのドラマ部分は良かったものの、それ以外の魅力が薄すぎる」
「単発作品の映画としては良かったけれど、ラスエボの続きとしてやってほしいコトはなーんもやってくれなかった」

 そこらがどうにも引っかかって、「悪くないけれど褒めきれない」という印象に終わってしまった今作。

 そう思うと、今作をフルに楽しめる人は
「02がそこそこ好きで、tri.やラスエボを見てなかった人」になるのでしょうか。
(映画合わせで始まったコトダマンコラボで「うわデジモンじゃん!なつかし~!」ってなるタイプの人が
 そのまま何の気なしに映画館に向かうぶんには丁度いいのかも)



 前作ラスエボの「パートナー関係の解消」ほどじゃないにしても、
今作でもラストで急に「何してくれてんの」って喪失要素をブチこんできたりして、
tri.からずっと「あの手この手でデジモンアドベンチャーをブッ壊そうとしている」のは悪趣味だなぁと思います。

 なんでそんなコトをするのかと言えば、パンフレットによると
「デジモンアドベンチャーの枷をなくし、新たなステップへと進ませたい」という旨が語られていました。

 要はまぁ「今後もデジアド展開を続けていくために色々模索している」ってコトなんだろうけど、
とっくの昔から「デジモンアドベンチャーはもういいんだよ!」って気持ちの身としては改めてゲンナリ。


もうデジモンネクストやろうぜ。


「ちゃんと02のラストまでつなげる気でいる」のだと思えば聞こえはいいけど、
年イチペースならまだしも、こんなローペースで後付けの補完ばっかりさせられていってもなぁ…。
いっそ息子世代の完全新作ストーリーとかやってくれた方が「未来」を見られてありがたいんだけどなぁ。



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