デジモンコラム
「デジモンアドベンチャーLAST EVOLUTION 絆」見てきた


 20/02/23




 あの忌まわしきデジモンアドベンチャーtri.6章公開――の前日、2018年5月4日。
まだtri.との決着が付いていないまま発表された「デジモン新プロジェクト」から、早くも2年ほどが経ちました。

 新プロジェクト改め、「デジモンアドベンチャーLAST EVOLUTION 絆」。なんだこのタイトル。
tri.で負った深い傷を引き摺りながらも、またもや公開初日、2020年2月21日の朝イチで見て参りました。
こうして今も、共に劇場に向かえる仲間がいる自分は恵まれていると思います。
まぁ、tri.以降の環境汚染のせいで、デジモンから離れて行った仲間もぼちぼちいるのですが…。

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  マメ知識 

 割と知らない人も多いのですが、tri.は普通の映画ではなく「OVAつくったからそれを劇場でもやる」という形式の作品でした。
 なので公開と同時に円盤が発売されたり、動画サイトで配信されたり、上映館が少なかったり、お金がかかってなかったりしました。
 今作ラスエボは普通に映画作品なので、tri.とは色々と事情が変わっています。 
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 「怖くてもうデジアドの続編なんて見れねぇよ!」とすっかり腰が引けている人も多そうなので、
先にネタバレなしで軽く感想を書いておきたいと思います。

 今作は、かなりマトモではありました

 如何せん、前作となるtri.が「救いようのない駄作。これを褒めてる奴はむしろtri.の内容をちゃんと見てないバカ」
で一蹴できる程度にどうしようもない作品だったのに対して、今作はちゃんと見られる出来のアニメ映画でした。

「デジモン映画で一番好き!」と絶賛する人の声も、
「いや、デジアドの続編としては認められない」と否定する人の声も分かるので、俺としては丁度いい感じ。

 気になってるけどtri.がトラウマになっててstayしがちになってる人は、せっかくだし見てみるといいでしょう。
デジモンがこうも正しく盛り上がってる雰囲気なんて久々に見たし、
こういう時にこそ参加して、自分のデジモン観を照らし合わせて見つめ直すのはいいコトだと思います。


 俺個人としては、あえて点数をつけるなら65点くらいでしょうか。
これを高いと見るか低いと見るかも人それぞれですが、
tri.のあの後に単発映画でこれだけの安定した評価を持ってこれたのはすげぇですよ。

 ちなみに完結を迎えた今、改めてtri.各章に点数をつけると
 1章:50点  2章:20点  3章:35点  4章:45点  5章:tri.  6章:tri.  って感じ。



 今作はぼちぼち楽しめたからこそ、「自分で見て判断してみてほしい」と思える作品でした。
評判に囚われずに自分の感性で作品とぶつかってほしいという考えでもあるし、
単純に「今作は評価をするのが難しい」というのもあります。もっと色んな人の意見を見たい。



 というワケで、ここから下はネタバレアリでいきます。
今作は単品でお話が完結している?ので、ストーリーを追いはせず、色んな方面をピックアップしていく感じで。


作画

 ビックリするほど良かった…。
ちゃんと「現代アニメの素晴らしい作画パワーをデジモンにも使ってもらえた」という感じで、
さながらサイバースルゥースや、フィギュアライズウォーグレイモンのような嬉しさがありました。
「絵が良い」ってだけでもアニメーション作品としての価値が爆上がりするので、やっぱ作画の良さは大事なんだなって。

 「オリジナルスタッフを呼んだ」という実績からは到底考えられないぐらいに
tri.とは別のベクトルで受け付けられないレベルだったキャラクターデザインも、作画力のおかげか全然気になりませんでした。
今回はギャグ顔も控えめかつ自然でよかったよかった。

 なんといっても今作の導入でもあるパロットモン戦が絵面も動きもリスペクトも高レベルで、
「めちゃくちゃ掴みが良い」のが今作の評価を押し上げている成功点だと思います。

 いやあ、やっぱ街中でモンスターが暴れまわるってのは最高ですね(他人事)
tri.では「街中で戦ったら被害が出るのが怖くて戦えない…」と太一がウジウジ悩んでいたのがウソのように、
太一も他の子供たちもそこらへんは気にせず応戦していました。まぁtri.後半でも既にウヤムヤになってたしな!

 ていうか、「暴れてる脅威を鎮圧するコト」が結果的に周囲への被害もなくす最善策なのは言うまでもないので、
やっぱtri.が急にウジウジ悩みだしたのがおかしかったんだよなぁ。

 街や周囲への被害は避けられないものの、
ちゃんとチームプレイを活かしてエンジェモンたちが救助にまわってるシーンも良かったです。
 なんかラスエボ、エンジェモンが妙にカッコイイ。
ぶっちゃけ俺デジアドでもエンジェモンは大して好きじゃなかったんですが、
(初進化回も、進化できずに嘆くパタモンは好きだったけど、進化後のエンジェモンは別にだった)
今作のエンジェモンは全体的にやたらイケメンムーブが多めで夢女子になりそう。

 短いカットではあるんですが、そこそこ巨体なパロットモンが「高架下に潜り込んでくる」シーンが 
あえて現実味のある巨大感や非現実感をイイカンジに描写されてて、今作でも特にお気に入り。
しかしこいつ、最初の劇場版といい、作画に恵まれた時にばかり出てくるな。


 戦闘シーンは3回もあるし、日常パートでもラストでも息切れするコトなく最後まで安定感があったので素晴らしい。
ちゃんと映画作品らしく背景にも密度や奥行きがあって豪華だったし、
今作の作画を担当したゆめ太カンパニーさんには感謝するばかりです。

 あと、けっこうモブに気になる見た目の女の子が散見されたので暴走デジモン特急ポイントが高めですね。駅にいた子とか。


音楽

 「オリジナルのButter-Flyが劇場で聞ける」と思うと、それだけでも価値を感じる人が中々多そう。
デジアドの劇番や関連曲のアレンジがいたる所で流れるので、雰囲気がちゃんとデジアドになってていいですね。

 でも新しいアレンジのbrave heartや終盤の新挿入歌はあまりノれませんでした。
ついでにここで書くと、本家をリスペクトしたグレイモンやメタルグレイモンへの進化バンク演出は
最初は「おぉ!」となりましたが少し経って「……ぉぉぉ?」ってなりました。
アプモンアグモン回のウォーグレイモン進化の方が良かったな、という程度。

 ED曲は凄くいい曲、ではあるんだけど…合ってるかなぁ?


キャラクター

 大和屋氏が良い仕事をしたのか、関Pの修正も的確だったのか、特に違和感なくしっかり過去のキャラクターを踏襲できていたと思います。
今作では太一とヤマトにかなり焦点を絞った作品になっていますが、
tri.のおかげで声優変更や「活躍するキャラが絞られるコト」への抵抗がなくなっていると思うと、tri.も無駄ではなかった…?

 太一、パチンコ屋でバイトしてるんすね。
まあ太一なら特に深い意味もなく「時給いいし、ここでいいだろ」くらいのカルいノリで選んでそう。
今作はテーマに「選ばれし子供も普通の人間」ってのがあるそうなので、丁度いい塩梅のチョイスかな。

 ちゃんと太一やヤマトに「選ばれし子ども以外の友達がいる」描写があったのも地味ながら大事ですね。


 メインの舞台が現実世界かつ、大人になっていく子供側を重視しているので
デジモン側のパーソナル描写はtri.に引き続きかなり少な目ですが、要所要所でキメてくれるのでまぁOK。
でもやっぱ戦闘中にはもうちょい喋ってほしいなあ。単純にセリフ量が無さすぎて寂しいです。


 なお、総登場が話題になった02組の扱いですが、個人的には丁度いいカンジだったかなと思います。
tri.があんなカスみたいな扱いに終始させちゃったから今作はその尻拭いも兼ねてる感じになってたけど、
「02のキャラたちが元気そうにしてて話でも役に立ちつつ戦闘もこなす」と仕事はしてたので、まぁまぁOK。
でも強いて言えば、後半ではしれっとパイルドラモンくらいには進化していてほしかった。

 声優に関しては、妙に再現度の高い新しい京さんには文句なかったものの、
男3人の新しい声優さんにはどうも馴染めなかった…というか、自分の耳が馴染めるほどの尺がなかった感じ。
ただでさえ大輔も賢も伊織も特徴のある女性声優だったので、その後任となると荷は重かったと思うけど、
最初からずっと3人が同時にいるせいで「今誰が喋ってるのか分からない」ってのが何度かありました。
ていうか、伊織は京さんと同じ感じで別の場所から途中から合流でもよかったのでは?

 ただ、大輔も後半でエクスブイモンと戦ってるシーンあたりは妙に違和感がなくなってた気がするので、
もうちょい演技指導がしっかりしてくれてれば印象はもっと良くなってたかもって気がします。


ストーリー・ゲストキャラ

 異常気象によるオーロラの発生、現実世界へのデジモンの出現、
そして突然意識を失う人間たちの怪事件の謎を追う話でしたが、↑の行の内容全部保留で草。

 全然アドベンチャーでもなければ成長物語でもなかったのはどうかと思うけど、
エオスモンとそれを操る黒幕にフォーカスが当てられ、
さらに「無駄なシーン」というものが極力排除されてたので、映画としてはだいぶ見やすくまとまっていたなと思います。
全体的にテンポが良く、不快なキャラクターもいなかったので見ててストレスが溜まらないのはとても良かった。


 ・メノア

 ネタバレアリ感想と銘打ってるのであっさり触れると
今作の黒幕は元・選ばれし子どもの一人にして若き天才メノアだったワケですが、
このメノアのとった行動、
「パートナーを失ってしまった自分と同じ悲しい思いをさせないために、
 他の選ばれし子供たちが成長してしまう前に意識を奪っていく」
というのが、なんというか「理解できるスジの通った異常者」って感じでかなりの好印象。
正直見るまではもっと害悪の極みみたいなキャラだろうと思ってたので、良い意味で裏切られました。

 クッソ迷惑かつ弾劾されてしまう行動ではあったけど、
その規模の大きさがそのまま「いかにメノアが悲しい思いをしたか」に直結しているので、
彼女の天才っぷりと、頼れる人がいない寂しさと、行き場のない優しさが表れていて、上手いキャラクターだったと思います。
やい一乗寺、お前も孤独な天才だったんなら同じような境遇の子の力になってやれよ(無茶ぶり)
にしてもtri.の姫川さん、ホントはこんな感じのキャラとして描きたかったんだろうなぁ…。

 メノア演じる松岡茉優さんはゲスト女優とのコトで、ダルクモンやヨシノの顔が浮かぶ不安枠でしたが、
帰国子女でルー語だったり狂気が見え隠れしたりと難しい役どころだろうに、上手くこなせてましたね。ハウルのキムタクみたいだぁ。


 ・モルフォモン

 顔がデカすぎる


 ・エオスモン

 今作のボスデジモン。
恐らくはモルフォモンをベースにしつつ、メノアが色々がんばってたら色々あってできちゃったスゴい人工デジモン。
劇中ではメノアが「暁の女神から名前をとったの」と太一たちに説明していましたが、
後半で「フフ…あれは嘘。本当は、今作の脚本家の持ち馬から引用したのよ?」と明かすシーンは衝撃的でしたね(捏造の紋章)

 最初に登場した段階だと成熟期クラスで、さらには完全体、究極体(超究極体?)クラスにまでなっちゃうスゴいやつ。
単体でもまぁまぁ強い上に平気で増殖してきたりとディアボロモンリスペクトを見せつつも、
「ネバーランド」ではさらに進化してオメガモンを軽くいなすほどの圧倒的強さを誇示したりと中々の強敵。
作画がメチャクチャいいおかげで「強さに説得力がある」のがいいですね。聞いてるかtri.5章。

 正直俺は今作のオメガモンの戦闘はイマイチというか「ウォゲやディア逆ほど響かないな」って感想だったんですが、
エオスモンに足やらガルルキャノンやらをファフナーのフェストゥム戦よろしく切断されまくる負け姿はインパクトあったので、
ちゃんと新進化の必要性を訴えつつも、新たな敵に花を持たせたオメガモンの立ち回りは立派だったと思います。

 「進化しても名前が変わらない敵」と言えばアルカディモンやアルゴモンなど前例は色々あるんだけど、
これがそれらのリスペクトなのか、
「エオスモン」という存在はメノアにとって不変のものなので名前を変える必要性がなかったというコトなのか。
まぁぶっちゃけ区別が面倒なので、「劇中での呼称は変わらないけど設定上は名前も変わる」がベターかな。


井村京太郎

 メノアのおつき。初見ではあまりにも華がないキャラデザで笑ってしまったキャラ。
いかにも怪しい動きを見せていたその正体はメノアの尻尾を掴もうとしていたFBIの人間で、
それほど出番はなかったものの、しっかりミスリード担当として役割を持ち、最終的には正義側の人なので不快感もナシでイイカンジ。
最終的には一応、「作中で本人にとって一番満足度の高い結末を迎えられた人」になるのかな。

 この名前は、かつて読売広告で活躍し東映とも縁があった「木村京太郎」さんにあやかった名前だそうですが、
「井村京太郎」という名前は偽名で、本名は山田さんらしいです。下の名前はそのままなのか…。
ていうか、なんで無駄に「井ノ上京」と字面を被せちゃったんだろう。京さんとはなんの接点もなかったし。

 個人的にはこういうキャラにこそパートナーデジモンもいて意外な活躍を見せてくれるのが好みなんだけど、
今作の設定だと大人はデジモンと無縁になっちゃうのでどうしようもないのが残念。



 個人的には、「最初のパロットモン戦がメチャよかった」のと
「ゲストキャラの好感度が高かった」という2点がラスエボに対する安定評価の柱になってる感じです。


 というワケで、良かったところは大体書いたので、あとは個人的に気になったところばかりあげつらっていきます。


なんか機能があるらしい太一の新ゴーグル

 これいる?
俺は見ててサッパリだったけど、小説版も読めば「敵の行動パターンを分析してくれるアイテム」だと分かるらしいですね。
結局最初に出てきてそれっきりだし、ちょっとゴーグルに機能をつけてあまり活かさないのはtri.リスペクトかな?


スマホデジヴァイス

 なんかみんなして使ってたからてっきりこの型に一新されたのかと思いきや、
元のデジヴァイスも残ってるし、普通にお別れゲージが連動してたりして機能してるならそっちでいいのでは…。

 デジヴァイスはあの流線型のデザインが絶妙な雰囲気を醸し出していてカッコイイガジェットなのに、
わざわざスマホとかいう一般普及したアイテムにその特別な役割を担わせるのはデジモンに限らず好きじゃないです。


 劇中でも「スマホじゃ傍受されるから」ってんで代替機用意されちゃうし、
最終的には元のデジヴァイスが金色になって最終アイテムになるし、スマホデジヴァイスくんかわいそう。

 
なんか金色になったデジヴァイス

 これいる?
いや、なんか想像以上に扱いが軽いというか、いわゆる「進化バンク」的なモノもなかったせいで全然印象に残りませんでした。
これよりは石化デジヴァイスの方が商品需要ありそう。「俺にも昔はパートナーがいたんだけどね…」ごっこが捗る。




 今作の選ばれし子ども達の中で唯一「戦わない」という選択肢をとったのが空ですが、個人的にはダメでした。
事前に公開された短編「空へ」はちゃんと見ていたのですが、
正直なところ、「なんで空だけこんなに雁字搦めな状況にしたの?」というのが未だによく分かりません。

・選ばれし子どもやめたい
・華道うまくいってない
・戦いたくない
・ただの空になりたい
・ピヨモンと別れたくない

 と、あまりにも状況にマイナス点ばかりが多すぎるし、
付き合ってるはずのヤマトともなんか疎遠な雰囲気があって、どうにも見てて忍びないです。


 別に、戦わないのはいいんです。
8人もいたらそういう考えになる奴だって当然いる。尺にも限界があるからつくる側も助かるだろうし。
ていうかラスエボの世界でも選ばれし子どもは3万人もいるし、
太一とヤマトが偶然入ったホルモン屋の客の中にもいたぐらいなんで、割とそこらへんに戦力はいるのでしょう。

 ただ「空が戦う以外の選択肢をとるコトで、何かが好転した」というポジティブな描写が何にもないのが引っかかりました。
戦えない分なにかのサポートに回るとか、皆の帰りを待って何か準備をしておくとか、なんでもよかったんですが。

 てっきり、戦いを避け続けた空が終盤で逆転のきっかけをくれたりしてオイシイ所を持ってくかとも期待してたんですが、
座して死を待つのみで、デジヴァイスは石化し、パートナーのピヨモンともお別れになってしまいました。

 「何もできないまま大事なモノをなくしてしまう」というあまりにもあんまりな役回りだし、
結局は「02最終回があるので将来的にはまあピヨモンもいる」のが分かっているせいで泣ける感じでもなくて、
「ただただ空が損な役回りを押し付けられた」という印象ばかりを受けたのが正直なところです。

 
 ベッタベタでベタモンな展開ではありますが、
ヤマトと太一の戦いを知って我慢できずに駆けつけ、ホウオウモンでエオスモンへ一矢を報いる。
究極体進化で大量のエネルギーを使い果たし、消滅するピヨモンと涙する空とか、そんな感じの「見せ場」が欲しかったな。



広報・メディア展開

 文章の構成上こんな所で急に挟んでしまいましたが、
作品内容とは関係ない部分なのに、こういうところで心証が落とされていくのが残念です。
やたら「泣ける!泣ける!」と推してくるのも、定番だとは分かっていてもキツいところ。特に、泣けなかった時には。

 ラスエボ本編では最低限でうまくディア逆レベルに抑えられている「光子郎の烏龍茶」も、
広報はこれ見よがしにハッシュタグに組み込んでウケを狙ってたりするのがいや~キツいっす。
こういう浅ましいネタも、結局は喜ぶ人が一定数いるからいけないんだよな。エオスモン、一仕事頼むわ。


 映画の上映に先駆けて、2月7日から「ノベライズ版が発売された」のもイヤな感じでした。 

 もしこれが、「デジアド、02、tri.と本作をつなぐ前日譚」などであれば俺も喜んで飛びついた所ですが、
その実態は「普通に本編をなぞっただけの内容」らしいんで、スルーしました。
先行上映を見て、且つノベル版も読んだ人から「後でいいよ」と言ってもらえたおかげです。今も買ってません。

 しかもノベライズは2種類あり、普通のと、子ども向けがあります。子ども向けて。
こんな20年前のアニメの後付続編だけハイとお出しされても、チビッコも陳列する店員さんも困るでしょう。

 この「映画に先駆けてノベライズ版を出す」形式はデジモンに限らず他のIPでも行われているそうですが…うーん。
宣伝の幅が広がるしメディアミックス自体はいいコトだと思いますけど、
これって要は「映画の内容流用してノベル出したろ!上映後だと売れないからこっち先ね!」って解釈でいいんでしょうか?


 自分が買わないのは勝手ですが、当然買う人もいるワケで、その人たちにも内容に言及する権利があります。
つまりは、「ネタバレが流れてくる」状況ができあがってしまい、なんともむず痒い思いです。
どうせ見ると決まっている映画であれば、その新鮮さはできるだけ劇場で味わいたいというのは人情でしょう。

 幸い、自分の周りには先行上映組を含めマナーがよろしい人たちが集まっていたので、
ツイッターまみれの生活をしていても大してネタバレは流れてこなかったのですが、公式がネタバレをブチこんできました


これが俺達の最後の進化

 「アグモンとガブモンが新しい進化形態になる」コト自体は前から告知されていたんですが、
上映4日前に公式が追加したPVでその姿をバラすという、ワケの分からないコトをしてくれやがりました。
しかも、「チラッと顔が映る」とかじゃなくて、バッチリ全身が映っています。15秒しかないのに重要なネタバレばかりこなすな。

 いやまぁ、もっと早い段階からバラしてくれればこっちも納得できたけど、4日前て。
しかも映画上映より早く発売されていたノベライズ版でもわざわざ進化形態についての詳細は伏せられていて、
このPVより後になるようわざわざ公開が遅らされていたCDジャケットでもシルエットだったのに、なんでPVではバラしちゃうかな。


 そしてまぁ、この進化形態のダッセぇコトダセぇコト!!
「劇場で見たらショックだろうから事前に公開した広報の気配り」という皮肉ネタにも若干ゃ頷かざるを得ないレベル。

 劇中では太一たちが新たにつかんだ可能性の進化なのに、デザインが既視感のカタマリなのもどうなんですかね…。
こんなん、ジオグレイモンのコスプレした全裸のオッサンとマグナガルルモンになりかけのヴォルフモンじゃん。

 オメガモンは2回出てくるけどウォーグレイモンとメタルガルルモンは今回出番がないので、
「アグモンとガブモンが新たな究極体に進化したぞ!」っていう差別化イメージが弱いのも残念。

 映画を見終わるまでその不満はデザインに集中していたんですが、
劇場を後にしている時に、本編中では出てこなかった進化形態の「名前」を教えてもらったんですが、

アグモン勇気の絆
ガブモン友情の絆

 って………ウソでしょ…。
デザインはその内慣れるかもしれないけど、この名前は一生ムリかなと思いました。
一緒にいたけーいちは「新ポケモンのウーラオスかな?(いちげきのかた/れんげきのかた)」って言ってたけど、
俺はドラゴンボールの「孫悟空 身勝手の極意」あたりから悪い影響を受けたネーミングな気がします。知らんけど。

 普通にネクサスグレイモン、ネクサスガルルモンとかじゃダメだったのかなぁ。
こんなワケの分からん勢いだけのネーミングやって結局困ったり誤植するのは、他でもない公式サイドなのに。


 でもガンダム戦場の絆たち、映画の後に見たバトスピや公式絵だとそこまでは悪く感じなくて、
作画は終始安定してたはずのラスエボの方が超激烈クッソイマイチに感じたのがちょっと不思議でした。

 パートナーとの想いが強まって人間的な意匠が前面にでてきたのはいいとして、
それならそれでいっそマトリクスエボリューションしてくれた方が俺は良かった……かな?
特別感あるし、「人間には可能性が溢れてるからデジモンと合体もできるんじゃい!」って感じで。

 ちなみに友情の絆はバイクに変形してパートナーとなる人間を乗せたりできるそうで。 
……そういうのはアニメでやれや!お前はドゥフトモンレオパルドモードか!!

 ただでさえ絆は戦闘シーンも何が何だか画面暗いわでtri.2章を彷彿とさせてつまんなかったから、
そういう分かりやすいギミックがあるならちゃんと活かしてほしかった。公式が設定よこしてくるのが遅かったりしたんかな。


 そんなこんなでデジヴァイス含め新進化は全然イマイチでしたけど、
普段の進化バンクで現れてる光にパートナーとデジモンが吸い上げられていく進化シーンの演出はすきです。


過去作との整合性

 案の定ダメでしたね…。
というか今作、事前から「怪しいな」と思ってた部分は大体そのままダメだったけど、別の良い所でゴリ押してきた感じです。

 例えば「選ばれし子どものネットワークをつくってるのは光子郎じゃなくて本来はタケル」なんてのもそうですが、
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このくだりは完全に記憶違いだった上(作者不明?で、ゲンナイに教えてもらったもの 02の39話参照)、
ラスエボの「光子郎が管理している」という表現はまったく矛盾しないと分かったので、お詫びして訂正します。
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 デジモンアドベンチャーは「テレビでは描かれず、ドラマCDなどで初めて明かされる設定やその後」が膨大にあるので、
本当に続編をつくるのが厄介なアニメなんです。

 tri.も監督が「ヤマトがなんで宇宙飛行士になるのかが分からない」と配信番組で漏らしたり、色々と悲劇が起きましたね…。
「宇宙から敵が来るからだぞ」とリスナーがちゃんとその場で指摘コメントしたのに、
パーソナリティが「ファンが面白い妄想をしていますね」などとバッサリ切り捨てて一同茫然


 根本的に「02のその後」というだけでも後付で作劇し辛くなる要素は色々あり、
「子供たちの将来は02最終回で既に描写されている」コトはもちろん、
「選ばれし子どもたちは年々倍増していくので、選ばれし子どももデジモンも希少価値がなくなっていく」なんてのもそうです。
無印でも説明があるように、「太一たちは最初の子供たちではない」というのも、
その後の作品で「なぜわざわざ太一たちが率先して世界のピンチに立ち向かわなくてはならないのか」に説明が必要になってしまいます。

 一応、ラスエボでは「現段階では選ばれし子供は3万人いる」
「太一たちが選ばれたのは、メノアが彼らを最強チームと見込んで接触してきたから」など、
設定を拾ったり説明をつけたりと頑張ってはいましたが、それでも所々素直にノリきれない部分が出てきてしまうので、
やっぱり今更になって続きをつくるのには向いてない作品なんだな、と再認識しました。


 個人的には、tri.唯一の作中功績と思っている
「西島先生の言葉により、太一が外交官への道を固める」って設定がアヤフヤになってたのが残念でした。 
いや、結局は外交官を目指すコトには代わりないし、公式サイトにあった「進路に悩む」というより、
ラスエボ作中での描写は「とりあえず卒論に悩んでる」って感じだったので、西島先生の言霊はまだ響いている可能性はあるんですが、
それならそれでヤマトとの会話とかで分かりやすく言及しててほしかったなぁ。
tri.要素と言えば、望月をちゃんと出したのは本当にエラくて感服したので、先生も拾ってほしかったなぁ。姫川さんは…うん。


 まぁそこらへんよりも今作一番の問題は「大人になるとパートナーデジモンとの関係が解消される」という唐突な新設定に尽きるでしょう。

 ラスエボの前評判が最悪だった理由としては「tri.」の存在そのものが一番でしたが、
そのお通夜ムードを加速させたのが、
本家デジアドの実質上の監督である、角銅博之氏が自ら降板したニュースでした。

 その理由は「これまでのシリーズ設定とは相容れないプロットが採用された」とあり、
一体ラスエボはどんなプロットを採用してしまったのかをチェックポイントにしていた悪趣味なファンも少なくないでしょう。俺とか。

 そしてまぁ、その答えは案の定、コレでしょうね…。


 
 メノアが語る「パートナーデジモンは子供のもとにしか現れない」「大人になれば、パートナー関係は解消される」というこの初耳の新設定、
思いっきり02の及川をなかったコトにして矛盾しているので、そりゃまあ角銅氏も怒るわ。

 映画や続編で急に新設定が出てくるなんてのはどこでもよくあるコトではありますが、
(伝説のモンスターが登場!とか未知のエリアが発見!とか知られざる過去が明らかに!とか)
さすがに「オリジナルの描写と食い違ってしまう」というのは悪手と言わざるを得ません。

 続編である以上、「原作からの延長線上である」コトが大前提になるのに、
こうなってしまうともう脳が「パラレルですねぇ!」と自動的に判定してしまい、没入感が一気に削がれてしまいます。

 なんつーか…ここまではアレコレと過去作リスペクトを確かに感じさせてきた作品なのに、
「メインテーマは過去作を思いっきり否定する新設定」ってのが「なんでだよ!」感ある。

 ぶっちゃけこの設定、やろうと思えばもっと自然にできたハズなんですよ。
「前からこうでした」とか言っちゃうからよくない。「最近そうなりました」にすればよかったんです。

「大人にだってパートナーデジモンは得られるはずだったのに、何かの異変でそうではなくなってしまった」
こうするだけでも、結局の概要は同じでもだいぶ受け入れやすさは変わったはずです。
もしかしたら、角銅氏を怒らせない程度に共存するコトだってできたかもしれない。


 そも、デジモンアドベンチャーにおける「パートナーデジモン」というのはそこらにいるデジモンと意気投合するモノではなく、
パートナーとなる人間の心から発生する「写し身」のような特殊な存在であり、運命共同体であるという設定です。
デジモンアドベンチャーの8体にしたって、デジモンワールド側が(デジアド劇中では「デジモンワールド」です)
世界の異変に対抗するために8人の選ばれし子どもを選んでそのために用意したデジモンたちなのに、解消するの…?
それはゲンナイやらホメオスタシスからちゃんとした説明が必要じゃない?

 しかも角銅氏によれば、そのどちらかの命が奪われてしまえば、残された側もほどなくして果てると明かされたので、
「子供たちとパートナーの永遠の別れ」なんてものはそもそも物語の題材になり得ないワケです(全滅エンドになるので)


 ていうか「なんでパートナー関係が解消されるの?」っていう根本的な疑問への回答がなかったのも腑に落ちない所。
説明がない以上「そういう作品で、そういう設定をつくったから」以外の受け止め方がない。
結局はメノアも「ワケ分からん新設定に苦しめられた被害者」でしかないんですよね。

「リアルワールドにデジモン沢山いたら危ないから立派になった大人からはドラえもん奪っていくね」とか
「世界征服したいんでイイカンジに鍛えられたデジモンはいただきます」とか、なにか理由がほしかった。


 なんでこんな新設定をブチ込んで来たかといえば、分かりやすく単発映画として泣き所をつくるためでしょう。
それは別にいいとしても、正直「02最終回でみんな仲良くやってる」と分かりきってるから、俺は全然泣けはしませんでした。

 個人的なコトを言えば、デジモンアドベンチャーの世界において「別れ」は無印の最終回以上の感動はないだろうし、
39話でも描かれていた「運命のパートナーをずっとずっと待ち続けていたデジモンたち」がいじらしくて大好きなので、
今更になって「別れによる感動」なんてモンに頼ってほしくなかった。

 いたるところに散りばめられたリスペクトや、
現代の力でイキイキとしているキャラクターたちを見るだけでも、俺は十分に満たされていたのに…。

 
 かくしてラスエボは、その唐突で目的が不明瞭な新設定を軸にして物語が展開してしまいます。
「本来ありえないお別れの物語ありきでの続編」なんてものをつくられてしまえば、
オリジナルのスタッフや、ファンの中にも今作を到底受け入れられない人が出てくるのは当然の話でしょう。

 かくいう俺も、ラスエボに関しては「完全にパラレル」だと割り切った上で評価しています。
先述の通り、メノアやエオスモンまわりは気に入ってしまったので、「パラレルだと思えばまぁ」って所に踏みとどまっているワケです。


 さて、このパートナーが消えてしまう新設定ですが、割り切って受け入れるにしても詰めが甘かったと思う部分があります。
それは、劇中においてパートナー解消へのカウントダウン条件が「大人になる」という極めてアヤフヤなものと、
「進化する」という作中的には能動的な行動が抑止されてしまう2つ、その両方があるコトです。

 まず「大人になる」の方ですが、作り手のさじ加減すぎて機能してないのが気になりました。
「未来に広がる無限の選択肢、そのパワーがなくなる」のが良くないらしいんですけど、
これ別に「大人になるコト」と関係ねーんじゃねーかなって思います。

 メノア曰く「何かを選択するというコトは、他の全てを選択しないというコト」って理屈でしたけど、
「時間をかけて何かを極めるコトでやれるコトが増える」とか「制限を知るからこそその範囲内が自由になる」とか、
実際の「可能性」のイメージとは乖離したオレ設定の定義を出されても、直感的にノれないものがありました。

 もっと単純に「年齢」なら分かりやすかったんですけど、
飛び級をするほどの天才であるメノアには別れが早く訪れた一方、
進路に悩む太一より、起業して社長になっている光子郎の方が進行は遅かったりと、何が何やらでした。
可能性で言えば、着実に医者としての道を進んでいる丈先輩が真っ先に犠牲になりそうなのにそうでもなかったし。


 「進化の多用がお別れゲージを大きく減少させる」というのは分かりやすさこそあるものの、
キャラクターたちの進化を抑制させてしまうので、作劇としては盛り上がり所を削る枷でしかないと思いました。
「進化できないならできないであれこれ工夫するぜ!」って展開には別になりませんでしたしね。

 逆に、この制約が設けられたからこそ新たな進化形態では問題を解決してゲージ全回復!
パートナー契約更新!モルフォモンも帰ってきてハッピーエンド!希望の未来へレディーゴーッ!
…ってオチもけっこう期待してたんですけど、実際は太一とヤマトどころか他の無印組もパートナー失ってて草も生えない。

 お別れ設定が明かされる前から見せられる成熟期軍団による舐めプや、
今作で結局はスルーされた異常気象問題もあわせて真の黒幕がいるのかもしれないけど、 
そういう点も含めて出し惜しみが散見されたりして、「完全燃焼はできなかったなあ」というモヤモヤは最後まで晴れませんでした。
 ちょっとした絵面をつくるだけでもいいから、tri.で培った究極体総進撃とかやってほしかったなぁ。


 上の方で「あえて点数をつけるなら65点くらい」と書きましたが、
これ具体的には「前半90点 後半40点」でその平均が65点です。正直、後半は俺の見たい決着ではありませんでした。

 なんなら、成長して人間として苦労しながらもデジモンと過ごしてる前半みたいな話だけでも良かった。
どうせ02ラストでみんな幸せにやってるのは分かってるんだから、
「パートナーとの別れ展開でお涙頂戴!」とか、
「ここから何作かかけて02最終回につながります!」みたいな、助平心が見え透いたコトはやめてほしかったです。
なんか、結局はオメガモン冒険の絆とか出そうだし。


決着

 映画見終わったあとの最初に出た素直な感想が「オチてなくない?」でした。
メノアの暴走はとりあえず阻止したけど、結局太一たちはパートナーデジモンを失ってしまいました。

 最後のアグモンの「太一…おっきくなったねぇ」は、tri.がやりたかったであろうセリフを
今度こそちゃんと演出できた感じでこの一連のシーンは感慨深くきっと今作最大の感動ポイント。…なのですが、
「パートナー関係の解消」がどういうコトなのか良く分からないまま「会いに行こう!」でシメられたので、
正直、このラストをどう受け止めたらいいのかがよく分かりませんでした。

 描写から素直に考えれば
「パートナーがデジタルワールドかどっかに再構築あるいは転生してるらしいから今すぐキミに会いに行こう」
ってコトなんでしょうが、記憶はどうなのとか、会えるなら別れ気にしなくてよくない?とか色々と疑問が湧き起こります。
そもそも、これ前作のリブートとも被るんでマジやめてくれませんかね…。
タケルとか、これこの先あと何回パタモンと別れなきゃなんないんだよ。

 案の定、「進路に悩む子供達」が全然作劇に関与しなかったのも読めてはいたけれど残念。
短編もあって一番将来と向き合う葛藤の多かった空は戦線離脱しちゃうし、なるほど成長すると可能性がなくなりますわ。


 俺は今作を「02最終回につながる単発映画」という認識で見ていたので、 
「本当に別れを挟まれる」とは思ってなかった…というか、ただの二度手間なのでマジでやめてほしかったです。


 無数の人間を勝手に巻き込むメノアの凶行はほっとけないし許されるモノでもないですが、
ああも啖呵を切ってネバーランドをブッ壊したからには、ちゃんとした救済と奇跡を運んでほしかった。

 あの劇中通りの展開にしたって、エピローグは釈放されたメノアも一緒になっての
「パートナーを探す冒険へ」というシメ方なら、もっと爽やかな希望を持って席を立てた気がします。


まとめ

 例によって結局は文句が目立つ感想になってしまったのですが、
如何せん本当にマジで前作が前作なので、正直ラスエボは非常に評価がし辛いところです。
ヘンに甘すぎやしないか、厳しすぎやしないか、自分でもよく分かりません。

 ちなみに、映画を見てすぐにツイッターに書いた感想はコチラ
感想ってのはやっぱ一番絞りで出たモノがもっとも素直な答えだと思うので、載せておきます。

 ただ、パロットモン戦を見た時の自分の高揚感は間違いなくホンモノだったし、
本編を見るまでの印象に対してメノアやエオスモンが魅力的なキャラクターだったのはとても嬉しかった。
何より、tri.という凄惨な核戦争を経た現在において、いざ割と真っ当なデジアドの続きをお出しされて、
それを素直に楽しんで喜べた自分や周りの人の心にはホッとするものがありました。

 もちろん、今作に全然納得いってない人もいるだろうけれど、
「とりあえずデジモン界隈に活気の風が差し込んできた」のはありがたいコトです。


 決戦中に出た「こんな過去にしがみついているような場所にいちゃいけない!」という屈指の自虐ゼリフは爆笑モノでしたが、
実際ラスエボは一度デジモンを壊すためにつくられたらしいんで、 デジモンアドベンチャーという枷から放たれた今後に期待ですね!

 …まぁ、4月からはデジモンアドベンチャー:が始まるんですけどね!

 ラスエボもラスエボで「売れたら続編やります」って雰囲気が多分に感じられるのがなんともですが、
この「現実」というネバーランドでデジモンを追いかけるなら、進化し続ける冒険の日々を甘んじて受け入れるのが、賢い選択なのでしょうか。



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