デジモンコラム
将軍グラビモン!土神軍団の恐るべき全貌


 公開日:24/07/14

 今回紹介するグラビモンは、アニメ「デジモンクロスウォーズ 悪のデスジェネラルと七つの王国」で初登場したデジモン。
クロウォ第2シーズンの敵幹部となる「デスジェネラル」の1体であり、
荒野のような王国「キャニオンランド」を支配する土神(どしん)軍団将軍だ。

 グラビティな名前通りに「重力」を操る能力を持ち、戦場の命をいかに散らすかに智謀をめぐらせる非情な策士でもある。
膨大なデジモンによる大軍勢に加え、コアが無事ならば何度も復活する再生能力持ちなど、改めて見ると中々に属性過多。

 のっそりヒョロペラしたシルエットでマッドサイエンティストのような風貌をしていて、
声を担当した中原茂氏によるネチっこい怪演も相まって、なんともつかみどころの難しいキャラに仕上がっている。


デスジェネ編、マジで声優が豪華。
中原氏はデジアド無印が構成を参考にした「聖戦士ダンバイン」の主役、ショウ・ザマもやっているぞ。南無三!

 物語的には、シャウトモンたちが最終形態「シャウトモンX7」に初合体する回の敵でもある。
キリハを誑かしたり、デッカードラモンを戦死させたり、グレートクロスしたX7にも一方的な試合はさせなかったりと、
終盤の登場だけあってデスジェネラルの中でもけっこうな強敵の部類…だとは思うのだが、
卑怯な戦術をも厭わなかったり、再生任せで「倒されるシーン」自体は何度もあるせいか、強敵の印象は多少薄いかもしれない。


43話ラストで、X7のセブンビクトライズによって自軍が壊滅させられたのを目の当たりにしても、
その破壊力を恐れるのではなくニヤリと笑うこのカットの大物オーラはかなりのモノだが…




44話冒頭のバトルでは急に小者感マシマシで高低差がスゴい。これも重力操作の産物なのか。



 そんなグラビモン、実は彼の公式設定にはしれっと凄まじい内容が書いてあったりする
今回は、アニメの活躍だけでは分からなかったその設定について紹介するコラムだ。

◇超獣神グラビモン

 早速グラビモンの設定を公式図鑑から引用する。
リンクを貼っても急にページは移転するし、文章をコピペしてもサイレント修正してくる場合もあるので、スクショが一番確実だ。

 さて、一体どの部分が問題となる内容か分かるだろうか。
なんか妙に敵をいたぶる手段について筆がノっている感じはあるし、
「ビッグデスターズ」とか「知謀、湧くが如し」も気になりはする箇所だが、そこではない。

※1 ビッグデスターズ
 クロスウォーズ作中ではアポロモン、ネオヴァンデモン、ドルビックモン、スプラッシュモン、
 ザミエールモン、オレーグモン、そしてグラビモンの7体が「デスジェネラル」という括りの将軍となっているが、
 公式設定では既存種であったアポロモンは外され、その他の6体が「ビッグデスターズ」という括りになっている。
 なお、デスジェネラルとは何かはアニメを見れば分かるのに対し、ビッグデスターズは未だによく分からない。

※2 知謀、湧くが如し
 元ネタは、軍人である東郷平八郎が秋山真之を「智謀如湧」と称えた逸話からだと思われる。
 それだけなら別になんの問題もない引用設定だったが、
 何故かグラビモンより少し前に登場したタクティモンにも「知謀、泉が如く湧くがごとし」と称えられる設定があり、
 短期間、ていうか同一作品のキャラに対してネタが被ってしまっていて、頭が良いはずの設定なのに頭が悪い。



 正解は、「軍団も神獣型のデジモンが大半を占め~」の箇所だ。
これを文面通りに受け取れば、グラビモンの軍団はその半数以上が神獣型デジモンであるコトを意味する。
100体なら内51体以上が神獣型デジモン、1000体規模なら501体以上が神獣型デジモンで構成されるのが公式見解というワケだ。

 一体これの何がヤバいのかというと…
なんと、グラビモンが登場した2011年時点だと神獣型デジモンはファンロンモンしかいないのだ。


『軍団も神獣型のデジモンが大半を占め、軍勢力としても圧倒的な強さである。』

 神獣と言われてそれっぽいイメージのあるエアドラモンやユニモン、ヒポグリフォモンといったデジモンたちは
実際には「幻獣型」「聖獣型」「魔獣型」などに分類されているために、
明確に「神獣型」と指定された場合、本当にマジでファンロンモンだけが該当する事態になってしまっていた。

 ファンロンモンと言えば、世界を守護する四聖獣を統べる存在にして、
善悪を超越し、世界そのものである「大地」を司るとされる皇帝デジモンだ。

 だのに、グラビモン率いる土神軍団は「半数以上がファンロンモンで構成されているのが公式設定」という、
戦力がむやみにインフレしがちなクロウォ世界でもブッ飛んだ内容が公式から示されるコトになった。そりゃつえぇでしょ。
これならグラビモンも一国の主なんかにおさまらず、クロスハートもバグラ軍もまとめてあっという間に転覆させられそうだ。

 一体どうやってスカウトしたかに関しては「グラビモンが上手くノセた説」「小さい頃から大事に育ててきた説」など色々考えられるが、
どちらかというと「軍団の大半を占める」ほどにファンロンモンが大量に存在する状況の方がヤバそうだ。
世界の均衡、絶対ブッ壊れてるでしょ。位相もズレまくって四聖獣の名前とか全員シャッフル状態なんじゃないか。



 ……まぁ、流石にいくらなんでも公式も
「グラビモンの軍団は大半がファンロンモン!」という意図でこの設定を書いたワケではないだろう(ないよね?)

 何がいけなかったかと言えば、安易に設定中で「〇〇型」という表記を用いてしまったコトだ。
デジモンには当初から「〇〇型=種族」の設定が根付いているのだから、事故を避けるためにもっと言葉を選ぶべきだった。
今回の件にしたって、「神獣」などの表現であれば何も問題はなかったはず。
担当したスタッフはもっと、曖昧な言葉って意外に便利だって叫んでるヒットソングを聴いておけばよかったのに。
(実際、ホーリードラモンは「神獣デジモンの究極の形態」と書かれていたり、
 サクヤモンも「神獣系のデジモンを使役する~」とされていたりで、上手いコト躱している)



 今回のグラビモンのように特筆するほどユカイなコトになるパターンは稀でも、
公式設定中での「〇〇型」がおかしなコトになっている事例はちょくちょくとある。

 例えば、デーモンやデスモン、ベルゼブモンなどの設定には
「悪魔型デジモンを従える」的な表記がよく出てくるが、実は2024年7月現在でも悪魔型デジモンはいない
一応、ピコデビモンやイビルモンが「小悪魔型デジモン」として分類されてはいるものの、
デビモンは堕天使型だったり、ブギーモンは魔人型だったりして、意外にも「悪魔型」そのものは今も存在していない。

 ベルゼブモンの設定には『多くの悪魔型デジモンを統べる能力持ちながら、あえて孤高の存在を守る』とあったが、
あえても何も、統べる対象がいないのだからそりゃ孤高になるしかないぞ。
(なおこの記述、現在ベルゼブモンの設定文は修正されて「悪魔系」となっているのだが、
 原種の設定をコピペ引用していたX抗体版の設定では今も直っておらず、
 上で引用しているように「統べる能力持ちながら」と間に「を」が抜けている文章のミスもそのまま)


ちなみに、旧カードゲームスターター2収録のヴェノムヴァンデモンは初期版が「悪魔型」になっていた。
しかしその後すぐに魔獣型に修正され、必殺技も変わり、ルール的にもエラッタが出されている。
つまり厳密に言えば、「悪魔型デジモンは過去に存在していたが、今はいない」のが正確か。




◇グラ(ビモ)ンナイツの諸君、強制合神せよ!

 ではせっかくなので、アニメで実際に登場したグラビモンの土神軍団の構成をおさらいしておこう。
 42話でキャニオンランドに辿り着いた当初、モニタモンの偵察とキリハさんの分析によれば

・飛翔能力のあるヒポグリフォモン200
・地獄の番犬ケルベロモン300
・並外れた破壊力を持つウェンディモン500

 …と、グラビモン軍は合計で1000体にも及ぶ大軍勢であるコトが判明。
さらに、玉座につくグラビモンの護衛としてアヌビモンが2体いるコトも分かった。
タイキさんたちが公式設定を知っていたなら、「さらにファンロンモンが1003体はいる」コトに戦慄していただろう。

 これだけでも十分に脅威ではあるが、グラビモンは敵を欺くために更なる軍勢を隠しており、
無数のケンタルモンやサジタリモン、サンダーバーモンやクロスモンも加わるという、超大規模な軍団を所持していた。
(最終的な総戦力はハッキリとしないが、キリハが当初の1000体を蹴散らしてグラビモンを一度追い詰めた際には
「キミが倒したのは、私の兵力のほんの一部に過ぎない」とグラビモンに返されていた。1000の数倍はあると見るべきか)


土神軍団の地上戦力。見た目的に強そうなデジモンばかりで、本編最終決戦レベルの絵面だ。


空中戦力。デジモンクロスウォーズに念願のクロスモンが登場!(モブすぎる)


倒された2体のアヌビモンに代わって新たなアヌビモンも登場(セリフつき)。
戦いに敗れ尋問されても、グラビモンを倒す秘密は答えずに散っていく忠誠心の高さを見せた。


 改めて構成デジモンをまとめると、
ヒポグリフォモン(幻獣型)、ケルベロモン(魔獣型)、ウェンディモン(獣人型)、アヌビモン(神人型)
ケンタルモン(獣人型)、サジタリモン(幻獣型)、サンダーバーモン(巨鳥型)にクロスモン(巨鳥型)という顔ぶれとなった。

 残念ながら、神獣型であるファンロンモンの姿は確認されなかったが、
「神獣っぽさ」をもったそれなりに統一感のあるメンバーが集まっているのは好印象。


最後の戦いではダークネスローダーの力で周囲のデジモンを取り込みグラビモンもパワーアップ。
ダークネスというかもはやナイトメアな姿だが、これでもX7を圧倒するほどのパワーを見せた。

 本来なら究極体であるクロスモンやアヌビモン程度ならしれっと複数抱えるほどの戦力を揃えられても、
流石にクロスウォーズの破天荒な世界観でも、あのファンロンモンを一兵扱いで出すなんてコトはそうそうできなかったのだろう。








いやそういえばいたわ。




 他でもないクロスウォーズのデスジェネラル編、それも最初の王国のドラゴンランドでファンロンモンは既に登場していた
ネプトゥーンモンやらルーチェモンサタンモードとかガイオウモンだのアルカディモンだったり、
想定外のデジモンが急にそこらへんの敵でヒョイヒョイ出てきてファンを驚かせ続けるのがクロスウォーズだが、
ここでまさかのファンロンモン投入には、またもやまんまとたまげさせられた人も少なくないだろう。

 第一の王国「ドラゴンランド」を支配する火烈将軍ドルビックモンの部下としての登場であり、
例え弱者であろうと徹底的に敵を追い、取り囲み、焼き尽くすのを信条とするドルビックモンに対し、
流石は我が主。さ、追跡はワシに任せておけ」と完全に忠臣ムーブをキメるファンロンモン様を見せられて、
全国のお茶の間でテレビを見ていた四聖獣たちはお茶を噴きだしたコトだろう。※これがアニメ初デビューです


ドルビックモン様も「頼もしい奴、ファンロンモン。あれこそ竜の鑑…」とご満悦。
…うん、そらまぁ頼もしいだろうし、さぞ竜の鑑でしょうね……。



 とにかく、アニメ版も「ファンロンモンを兵としてフツーに出せる世界観」ではあったようだ。
とはいっても、グラビモンの公式設定を遵守するには「軍団の過半数をファンロンモンで占める」必要があるので、
ファンロンモンのバーゲンセール」か、「部下がファンロンモンしかいない」の2択を迫られてしまう。

 前者をやれば今以上にファンロンモンの地位が危ぶまれていただろうし、
後者をやってもグラビモンの参謀キャラが活きない(ぼっち将軍はスプラッシュでやったし)ので、
アニメスタッフによる土神軍団の采配は、何も間違ってなかったように思う。まぁ間違ってるのは公式設定だし…。


「第一の国の主の俺にこれほど手こずるようでは…これからの将軍には手も足も出ないだろうよぉ」
と、散り際に「奴は四天王の中でも最弱…」ムーブを自らキメていくシーンも有名なドルビックモン。
自己評価が低いドルビックモンのためにグラビモンがつよつよ竜の鑑をレンタルしてあげた説が脳裏をよぎったが、
その後の復活回の態度を見るにこの時は「ただ捨て台詞を吐いてやりたかっただけ」っぽいので、そうでもなさそう。




◇DIVER#2020

 さて、グラビモンの登場から10年以上経った2024年現在では、他にも神獣型デジモンが追加されている
果たしてこの間に土神軍団の大半を占めるのに手頃な人材は登場したのか、チェックしていこう。

 まずはミタマモン
スマホ向けゲーム「デジモンリアライズ」で2020年に実装されたデジモンで、
テイマー・真由のパートナーであるクダモンが進化した、新たな究極体デジモンだ。

 そしてファンロンモンルインモード
延期に延期を重ねて2022年にようやく発売された新作ゲーム「デジモンサヴァイブ」の裏ボスにあたり、
名前の通りにファンロンモンがなんか色々あって闇堕ちした姿。たぶんブドウ味。


 これら2体の登場で、2024年7月現在では神獣型デジモンは以前の3倍である合計3体にまで増加した。
すごーい!これならグラビモンの土神軍団の大半を神獣型デジモンで占められるわ!……とはいきそうにない
依然として究極体率は100%だし、片方にいたってはファンロンモンのモードチェンジで、カロリーが高すぎる。

 今まで多くのデジモンがあえて避けてきた「神獣型」というグループは、
きっとこれからもそうそう繁栄はせず、追加されたとしても究極体クラスの大物ばかりになるだろう。
ファンロンモンやミタマモンの養殖に成功するのが先か、グラビモンの設定がしれっと書き直されるのが先か…。


完全に余談だが、ルインモードの登場で図鑑に登録された神獣型デジモンが3体になった頃、
各神獣型デジモンのページでは更新するごとに残り2体のデジモンがリーチし続ける神獣型スロットが遊べていたのだが、
現在は表示される関連デジモンの幅が広まってしまい、残念ながら4体目の登場前に利用不能となってしまった。




 せっかく現在の話をしたのだから、グラビモンに訪れた大きな変化についても触れねばなるまい。
グラビモンを含むクロスウォーズ組のデジモンは、「世代や属性を持たない」のが一つの特徴だったが、
2020年の10月に図鑑がアップデートされ、
実にアニメ放映から10年ほどの歳月を経てから、急に世代や属性などの設定が追加される運びとなった。

 それ自体はまぁいいとしても、案の定「やらかし」部分が出てきてしまう。
なんとデスジェネラルの内、ザミエールモン、スプラッシュモン、そしてグラビモンの3体だけが完全体にされてしまったのだ。
…いや、こんなモン全員究極体以外にあり得ないだろ!? マジで何考えてんだよ…。

 自分は元々ダークマスターズやコマンドメンツ三将軍のような「敵幹部デジモン」が大好きで、
デスジェネラル編自体が好きなのもあってデスジェネにはまた強キャラ集団として活躍の機会に恵まれてほしかったのに、
こんなワケの分からないタイミングでワケの分からないケチがついてしまい、今でも非常に腹立たしい。
当時買い集めていたデジモンクロスフィギュアシリーズがあっけなく打ち切られたのと同じくらいに許せない。
ていうか、グラビモンは設定も強いコトばっか書いてるし劇中でも強敵だっただろ!エアプが雑に設定イジってんじゃねぇよ!

 そんな謎改悪を施されたグラビモンは、その後もじわじわと忘れられていくキャラになる…かと思いきや、
なんと2020年に放映された「デジモンアドベンチャー:」の第61話に再登場を果たしている。
今作では、自らの故郷を滅ぼされて帰る場所をなくし、生きる気力を失ったデジモンの1体として登場するも、
地上から遥か高くにある故郷へ帰りたいエルドラディモンを懸命に助けるタケルに心を打たれるという、まさかの味方ポジ
演じるのもクロスウォーズ版と同じく中原氏であり、グラビモンファンには必見の回かもしれない。


61話のデジモン紹介コーナーでもグラビモンがピックアップされるが、本当に「完全体」にされてるのがつらい。





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