デジモンコラム
「デジモンアドベンチャーtri.舞台版」見てきた


 公開日:2017/08/11



ブルーシアター六本木、駅からの道が分かり辛かった



 突如発表され、あれよあれよの内に公演が始まった舞台、超進化ステージ「デジモンアドベンチャーtri.」~8月1日の冒険~
20年ほど追いかけてきたデジモンも、ついに「実写化」に手を出してしまったかと思うと良くも悪くも興味がわき、
「せっかくだから、初回に行ってみない?」という流れで仲間が4人ほど集まったので、見に行ってきました。
 そんな訳で軽く感想をまとめておきますが、今回ネタバレは控えめでいきます。
舞台だけの一話完結で終わっているし、円盤化も決まっているので、興味がある人は劇場や円盤でどうぞ。

---追記---

 ニコニコ生放送での配信も決定しました。
 視聴には1800ポイント(1800円相当)が必要ですが、観劇や円盤購入に比べるとだいぶお手頃なので、興味のある方は是非。

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 こういう「舞台」を観劇する習慣はなかったけど、デジモンを通して新しい文化に触れてみるのも悪くないじゃないか。
…でもチケット代7800円ってのはちょっと重いかな…。 舞台は相場がこんなモンらしいからしゃーないんだけど…。


 先に感想を言ってしまうと、メチャクチャ良かったです。
tri.でやってほしかった内容を舞台がやってくれた」と言えば、大体のニュアンスが伝わるかと思います。

 サイトにあらすじは書いてありますが、
時系列はなんと「tri.終了後」であり、戦いを終えた子供たちが、
思い出のあの日、8月1日にみんな揃ってキャンプをしようという所から始まります。

 今回のお話の内容もtri.同様に「成長した子供たちが悩みを抱えて再び戦う」ってな感じではあるんですが、
悩みの内容にも納得できるものがあるし、変にウジウジしてなくて、ちゃんと建設的な答えを見つけて終わってくれるのでサワヤカ。

 tri.で散々指摘されていた「キャラの知能指数下がりすぎ問題」も舞台版ではそんなコトはなく、
ちゃんと「デジモンアドベンチャーのキャラ」が実写化されているので、「もうこの人がtri.の脚本書いてよ」とか言いたくなります。書いてよ。

 無印のキャラが成長した姿だというのが分かるし、02での出来事もさらっと触れてくれて話が延長線上にあるのが分かるし、
tri.の内容自体にも言及しているので、原作に対するリスペクトがしっかりしているのがとても好印象。

 流石にまぁ、実写化というコトでビジュアルや子供たちの声の変化は万人には受け入れがたいモノもあるでしょうが、
既に同様の変異をtri.で経験しているので、思ったほど抵抗もなく、すんなり受け入れられました。
人間キャラは髪型の再現が絶妙で分かりやすさを維持しつつコスプレ感が強く出すぎないラインに収まっているし、
ちゃんと制服と私服を着替えて行動できるという点でも、tri.に勝っています。 ていうか、tri.はこんな所で負けるな
 役者さんの演技も熱が入っていて素晴らしく、特にミミちゃん、丈先輩、光子郎あたりは声もハマり役で良かったです。

 「人形で出演」というコトで話題になっていたデジモンも、その操演のレベルの高さに終始驚きっぱなしでした。
デジモンの後ろにはそれを操る黒子さんが常にいる訳ですが、初っ端から
「これはこういうモンなんです!こうしなきゃ仕方ないでしょ!」ってのがダイレクトに伝わって、思ったよりすぐ気にならなくなりました。
人形にしたおかげで子供たちとのサイズの対比はバッチリで、安易にデッカい着ぐるみ軍団にするのとは違った効果が得られています。

 どんなシーンでもデジモンの動きが滑らかで、パタモンやテントモンなどの飛行系デジモンはダイナミックな動きもあります。
例えばデジモンがやられてしまったシーンなどでは、黒子さんも一緒に倒れたり、操作する道具を奪われてしまったりして、
「そのキャラがどういう状況なのか」が表現されていて、「こういう手法もあるんだなあ」とただただ感心していました。
つまりはスーツアクターと同じような雰囲気というか、人形師さんもキャストの一人なんだなってのが伝わります。

 話は役者さん、デジモン人形と操演者さん、そして舞台の背面いっぱいを使ったスクリーンやライトで演出され、
アニメ本編のシーンが流れたり、ベビーフレイムが映像として処理されたりして、「豪華なヒーローショー」と言った感じ。

 場面転換の切り替えっぷりもすごく、
「さっきまで一人とデジモンが話すシーンだった」と思ったら、場面が暗転してすぐに8人とそのデジモンが勢揃いしていたりと、
実にスピーディでそこだけでも職人芸を感じる所がありました。


 話が後半に差し掛かる頃には進化した巨大デジモンも登場し、
その「数人がかりで動きを表現する」という強キャラ感あふれる演出で、心の中の男の子がときめきっぱなしでした。
むしろあの人形の形状をそのまま再現したフィギュアが欲しいぞ! なんかめっちゃメカニカルでテクニカルで凄かったし。
なお、巨大デジモンはキービジュアルにいるオメガモンも含めて数体が登場し、思ったよりお金かかってるなと思いました。
ただまぁ、戦闘シーンは色々制約があるのでヒーローショーのようにキビキビ動いたりするモンではなかったです。しょうがないね。


 シナリオには割とギャグというかネタも多いんですが、それは「展開の合間に差し込まれる形」であって、
「ギャグのためにわざわざ脱線する」訳ではなく、シナリオを進めながらも面白いシーンを織り交ぜていく、上手いやり方でした。
例によってギャグシーンではヤマトや丈の比率が高く、キャラの再現度が高いので素直に笑えます。


 そして個人的に何と言っても今作のMVPと言いたいのが、メインの敵も務めたエテモン
エテモンはそのデザインや設定の恩恵にあやかり、人形ではなく役者さんが着ぐるみを着て出演しています。
オネエ系でノリの良いオカマキャラっぷりに磨きがかかり、観客をいじってきたり、メタ発言を入れてきたりとかなりの暴れっぷり。
地味に、デジモン作品でメタ発言って中々聞いたコトなかった気がする。突然でちょっと驚いた。

 完全体らしいパワーを発揮したり、ファンならほのかに期待していたような要素や、こんなん読めるかよって展開も入れてきたりと、
舞台版tri.に「賑やかで楽しい」というエッセンスをこれでもかとブチまけてくれました。
 観客にエテモンコールを求め、突然のフリに観客が誰一人反応できずにいると露骨に不満そうな態度でもう一度声を集めて、
「エテモォーン!!」と観客が応えると「あら、六本木って最高じゃなぁ~い!」の一言で場の空気を一気に持っていったりとすごい。

 役者は違えど、当然ながらデジモンアドベンチャーで闘ったあのエテモンそのものであり、
デジモンアドベンチャー本編での出来事をしっかり踏襲した出演になっていて、
一緒に見ていた友人も「あー、そういえばそうだよな」と随所で唸らされる所がありました。
「選ばれし子供たちと因縁がありながらも多弁な敵デジモン」ってのが良いですね。tri.の敵デジモン、喋んないもんね。
 

 その後はまぁ、キャンプ場に異変が起きたりあんな敵が出てきたりと色々あって終わるのですが、
「高校生になった選ばれし子供たちが、将来に向けての一つのエピソード」としてよくできているので、
流石にデジアドは見ておかないとアレですが、tri.は見てなくてもOVAか何かのノリで楽しめるんじゃないでしょうか。

 個人的には、分かりやすく歴代デジモン映画で言うと、ウォーゲームの次くらいには並べて良いレベルだと思いました。
勿論、完全無欠な作品ではないですが、悪いところは大体tri.のせいにできるので、あえて特筆する不満はありませんでした。
個人的に一番の不満だった「流れる進化バンク映像がtri.のモノだった」ってのが、まさにtri.のせいだしなぁ。

 今作がアニメではなく、「舞台」という表現方法であるコトが分かっていれば、デジアドのファンなら十分楽しめるんじゃないでしょうか。

 原作に対する高い理解からくるリスペクトっぷりが魅力なので、
デジアドが好きな人や、「ひらパーの仮面ライダーショーが好きなタイプの人」なら、見ておいた方がいいでしょう。
なお、このページの最初の画像でもわかる「太一とヤマトの位置逆じゃね?」問題は、本編だと正しかったので安心してください。


 そんなこんなで面白おかしく観劇を終え、満足しながら劇場を後にしました。
一緒に見終わった4人して絶賛ムードで、「よっしゃ、何かお布施したろ!」と勢いでパンフレットも買いましたが、
2300円もする割にはしょっぱい内容だったんで、こっちはあまりオススメしません。巨大デジモンとか敵とか全部載せといてよ!


 正直なところ、「tri.本編がアレだから、舞台の方がしっかりしてるんじゃないか」っていう空気は見る前から感じていました。
公演前のインタビューを読んでいても真摯なのが伝わってきたし、かつてのスタッフである関Pがキャラ造形にアドバイスを入れてたりもしたからです。

 それでも、ここまでイイカンジに仕上げてくれるとは思わなかったので、期待通りの嬉しい誤算でした。
俺がここまで絶賛するというのも、読んでる人の7割ぐらいは「オエッ」って感じでしょうが、俺は褒める時は褒める人です。


 なお、今回の観劇で一番辛かったのは、「せっかく初日初回に言ったのに、その日の夜の部だったらミニライブも見られたコト」です。 
あのさぁ、最近のVer.20thもそうだけどさあ、すぐ飛びついた人が損するようにすんのやめろよ!!




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