デジモンコラム
ベルゼブモン、ブラストモード先行説


 言わずと知れたベルゼブモン
元々は進化前のインプモンがテイマーズ主役の予定だったり(※上からの要請で「やっぱ主役は竜でしょ」とギルモンにされました)
初登場以降もアニメやゲームへの登場機会も多く、ファンだけでなく公式デザイナーのわたなべけんじ氏のお気に入りでもあったり、
その割に関連商品は当時から大して売れず妙な商品も多くダメな印象が強いため今なお話題に事欠かない人気デジモンの1体。

 そんなベルゼブモンについて当時からずっと思っていたのが、この公式絵、デザイン分かり辛くね?というコト。
普通、公式絵は「私はこういうデザインです」と分かりやすく前の方を向いているモンなのに、
この疾走せし魔弾の王、いくら暴食を司る七大魔王だからって、客に尻を向けるとは何事か。

 ベルゼブモンの登場・活躍したテイマーズの時期は、メインデジモンに公式絵が複数用意される贅沢な時代だったのに、
デザインが分かり辛いベルゼブモンには特にそういう処置は与えられず、
カードや攻略本などに載ったベルゼブモンはいつも、孤高にして冷酷な見返り美人としてファンの目に映るコトとなった。



同時期に登場したデュークモンも、最初期は左の資料性が低い公式絵で登場したが、少し経って右の正面公式絵が公開された
(右は右で頭が潰れててちょっとアレだが…)

 アニメ・テイマーズも終盤に差し掛かった頃、ベルゼブモンは色々あってブラストモードにパワーアップ。
デジモンアニメの進化といえば「カッコイイ進化バンク!」な空気一色だった中、
バンクが無くとも作劇と演出だけで良い進化シーンは作れますのよと知らしめた、ベルゼブモンを語る上では外せない名シーンの一つとなった。


 さて、このベルゼブモンブラストモード、 
パワーアップ形態だけあって、以前のベルゼブモンとは比べものにならないぐらいに公式絵の資料性が高い!

 そうそう、こういう前向きの絵こそ公式絵だよ!
普通のベルゼブモンめ、よくも当時のファンをデザインの分かりにくさで困らせてくれたな。最初からブラストモードならよかったのに!
…ん?待てよ。むしろ、本当にベルゼブモンは最初からブラストモードありきのキャラだったのでは?

  「ブラストモードは普通に資料性が高い」→最初から想定された進化
  「普通のベルゼブモンはデザインが分かりにくい」→後付フォーム故に、ブラストと差別化した?


 なんとなくの疑念を元に調べてみると、思ったよりもそれを裏付ける根拠が出るわ出るわ!

 ――というのが少し前に周りで話題になったので、一応まとめておこうと思ったのが今回のコラムです。

 「初期案」を探る手がかりの一つとしては、
デジモンのような販促アニメの場合「関連商品」に目を向けるとその実情を窺えるパターンが多い。
こういう「作品放映中にグッズも同時に展開する」作品の商品というのは、
流通に間に合わせるため、実際に視聴者が作品を見るよりずっと早い段階で出来上がっていなければならないワケで、いやはやいつもご苦労様です。

 しかし、あらかじめ作っておいた商品が、常にそのまま作品内容に合致したかたちになるとは限らない。
テコ入れだったり、突如起きた事故への配慮だったり、単純に準備期間が短かったりとのアクシデントが起きた場合、
「商品作ったぞ!」→「あ、やっぱちょっと作品の内容変えますね」→「は!?しゃーねぇな、このまま商品出すか…
…ってな感じで、たまに作品内容と玩具とで食い違いのあるケースが起きてしまう。

  自分が知ってる中で、デジモンと同じくバンダイが手掛けている最近の例には、
  DXディエンドライバー(名前が中々決まらなかったらしく、音声収録が間に合わず劇中の「ディッエーンド!」という音声がない)や、
  DXモーフィンブラスター(収録されているキャラの台詞が、作中とキャラ付け、演技ともに大きく異なる。テコ入れの影響?)なんかがある。


 そんなワケでとりあえず注目したのは、変形玩具の「ハイブリッド超進化ベルゼブモン」。
立体物は土壇場での修正が利かせ辛いし、アニメデジモンのデザインは超進化シリーズを前提に作っている面も大きいので、初期案のソースとしては有力だ。


 おお、やっぱり羽が生えてるじゃないか!
超進化シリーズをあまり知らない人が見たら「インプモンの余ったパーツを背中にまわしてるだけじゃん」と思うかもしれないが、これは羽ですよ

 変形の際にインプモンのガワが余るのなら、その「ガワを羽に見立てる」のは超進化シリーズの定番機構。
先輩であるウォーグレイモン(アグモンの頭がブレイブシールドに)やパイルドラモン(エクスブイモンの頭が羽に)達がそうなのだから間違いない。
先輩たちがそうであったように、このベルゼブモンもまた、(色んな意味で)敵に背を向けてはいけない戦いの宿命を背負ったのだ。

 そして、商品名や箱のキャラ紹介に「ブラストモード」の名前はどこにもないのに、このベルゼブモンにはしっかりと羽が生えている。
ついでに言うと、(上の画像では見辛いが)目も緑色だ。
やはり、「普通のベルゼブモンとして、ブラストモードの姿を使用している」のが分かる。
ただ引っかかるのは、ブラストにとって羽と同じかそれ以上の特徴である陽電子砲を持っていない点だが、それは一旦置いておこう。


ちなみにパッケージ前面には、本来なら目が赤いはずの「普通のベルゼブモン(グリーンアイ)」が描かれている。
恐らく「目立つ目の色は玩具に揃えておこう」という配慮だと思われるが、目の色が違うからか、妙に爽やかというかピュアに見える。


  
 次に注目するのは、「拡張ボード2」に収録された、ベルゼブモン初めてのカードダス。

 超進化ベルゼブモンは見た目的に「羽が羽なのかどうかアヤフヤだった」のが否めないが、
こちらは見事にハッキリと、「羽はあるのに陽電子砲のない半端ベルゼブモン」として描かれきっている。
しかもこいつ、よく見たら頭の第三の目だけが赤い。どこまで中途半端なんだ!

  余談だが、このカードのデザインだと足にしっかり愛銃・ベレンヘーナ用のホルスターがあるが、
  超進化版は足がほとんどインプモン胴体のままのため、ホルスターは省略されている。
  じゃあ超進化版は銃をどこにしまうのさというと、羽(もとい、インプモンの耳)に収納する。背中のガワは羽ではなく巨大なホルスターだった…?


 拡張ボード2は2001年9月下旬の発売で、
その後12月上旬に発売された「ブースター13」にて、尻を向けた方の公式絵ベルゼブモンの使われたカードが収録される。 
発売順序からしても、やはり「初期のベルゼブモンはとりあえず羽は生えてた」と見ていいだろう。 


これまた余談だが、「拡張ボード4」には、ベヒーモスを駆るブラストモード(獣王拳ラーニング済)という強欲なベルゼブモンが登場した。
さすが全部乗せだけあってやたら強そうだが、実際に走るとなると空気抵抗がジャマでしょうがないだろう。



 次は、テイマーズ期のデジヴァイスである「ディーアーク」。これのVer.2に初収録されたベルゼブモンは…


一体どうダブルインパクトするのか。

 ビンゴ!
右下のドットを見れば分かるとおり、「ただのベルゼブモンとしてブラストモードが登場している」。
最初はこの攻略本を見ていて危うく誤植図鑑に載せかけたが、
Vジャンプブックス、ケイブンシャ、どちらの本でもこの名義、この公式絵、このドットだったので、この状況が全てさ!
(※Vジャンプブックスもケイブンシャも誤植的に信頼ないですよね、という点は無視する)

 「攻略本の発売」と「電子玩具の開発」なら当然、後者の方が先に済んでおかなくてはならないシゴトなので、
ディーアークの食い違い(ただのベルゼブモンなのにブラストモード)を攻略本がカバー(普通の公式絵を掲載)したのだと窺える。
 なお、普通のベルゼブモンのヴァイスドットが登場したのはディースキャナVer.1(もしかしたらディーアークアルティメットバージョンかも)。


 最後に改めてチェックしておきたいのが、ベルゼブモンの代表作、「デジモンテイマーズ」のOP映像。
テイマーズのOP映像は進化先のデジモンも先行登場しているので、ここでその姿を確認できる。

 これはまだ進化先のデジモンにシルエットがかかっている初期映像のものだが、ベルゼブモン、それもブラストモードの姿が確認できる
普通に振り返れば、「初期段階からブラストモードまで想定して映像に入れてたのね」となるが、
これまでの推測を踏まえると「やはり、ベルゼブモンは最初からブラストモードで出す予定だった」という確信に変わる。

 ベルゼブモンへ進化したのは27話(10月7日放映)、ブラストモードへの覚醒は43話(1月27日放映)とけっこうな間がある。
インプモンにとっての劇的な変化は「ブラストモードへの覚醒」より「ベルゼブモンへの進化」の方が大きいのは言うまでもないので、
OP映像が表しているのは「(ブラストモードの姿をしているが)ベルゼブモンへの進化」と見るべきだろう。


 ここまで根拠があるのだから、仮説は正しかったとみて間違いないだろう。たぶん。
ついでに、いくつか気になる点を補足。

◇陽電子砲

 ブラストモードにとっては羽と同じかそれ以上に特徴的なデザインであるこの武器だが、このページで紹介した、
まだブラストモードではないがブラストモードの姿をしたベルゼブモンが全員コレを装着しているワケではないのは少し不自然とも言える。
最初から「ブラストモードの公式絵が先に存在していた」と考えるなら、陽電子砲は全員持っていて然るべきだろう。

 しかしこの陽電子砲、現在の公式設定でも出し入れは自由なので、別に持ってなくても間違いではない。
超進化の場合は「変形ギミックとの兼ね合いで仕込める余地がなかったのでオミット」、
カードの場合は「ベレンヘーナを推したかったので乱射スタイル」といった具合であのような形になったのでは、と思う。

 個人的に気になっていたのは「陽電子砲」というネーミングの方。
ベルゼブモンの装備はベレンヘーナやベヒーモスとベベベな感じで統一されているのに、こいつだけ「陽電子砲」では浮いているように思うし、
去年に出たインペリアルドラモンの「ポジトロンレーザー」と意味がほとんど被っているのもひっかかる。(ポジトロン=陽電子)
数行前の推理を早くも否定してしまうが、結構ギリギリまで「陽電子砲をどうするか、いっそなくすか」というのは悩んでいたのかもしれない。

 というか、ブラストモード先行説を踏まえると、後付だったのは当時玩具化もされなかったベヒーモスの方というコトになる。
ベヒーモスが用意された経緯は分からないが、孤独な戦士(仮面ライダーイメージ?)としてバイクを与えてみた所、
思いのほかマッチしたのでそのバイクアクションに見合うように、羽や陽電子砲をモいで普通のベルゼブモンを用意したのかもしれない。


「ベルゼブモンはブラストモードのデザインが先行していた」と思うと、その後登場したクロスウォーズ版ベルゼブモンは、
背中の羽と右腕のベレンヘーナSDXで「ブラストモードを意識している」だけでなく、「ベルゼブモンの初期案を再現している」という見方もできる。
 もっとも、これは「そういう見方もできる」というだけで、XW版がこのデザインに落ち着いたのは合体玩具・クロスフィギュアシリーズの都合が大きい。
それはそれでまた「当初のブラストモード事情」にもつながると言えるのが、なんとも因果を感じる。


◇目の色

 「ベルゼブモンの赤い目は、ブラストモードになって落ち着いたため緑になった」という設定は有名だろう。
その設定やアニメの魅せ方に説得力があったので意外と忘れがちだが、
目の色はそもそもインプモンの時点で緑色なので、ベルゼブモンを無視してインプ→ブラストモードに直接進化しても、違和感はない流れになっている。

 しかし、やはり暴走形態としてレッドアイズ・フツウノベルゼブモンを挟んだコトで、
力を渇望するベルゼブモンの凶悪さや、その後の葛藤・改心などを描けたのだから、上手い処理だったのは間違いない。


◇ブラストモードという名称

 ブラストモードの公式絵が使われた初のカード化は、2002年3月上旬に発売された「ブースター14」。
このカードはVジャンプ2001年12月特大号(10月21日発売。マジ早い)に先行収録されたので、これがファンにとって初の「ブラストモード」名義になるようだ。
 
 ベルゼブモンがブラストモードとしてゲームに初登場したのは、12月29日に発売されたWSCソフトの「ブレイブテイマー」。
しかしこのゲームだと、同じく「~モード」の名を持つインペリアルドラモンパラディンモード(ゲーム中ではインペリアルPM)が登場しているのに、
ブラストモードはブラストベルゼブモンという名義での登場となり、しかも普通のベルゼブモンは登場していない。
(しかもこのブラストベルゼブモン、通常入手が不可能なイベント配布用だったらしいのだが、イベントが開かれなかった

 「ブラストだけが登場」し、さらに「名前が定まっていない時期があった」となれば、これもブラスト先行説を裏付ける根拠の一つとなるはず。
まぁ、名前に関してはこのゲームだとデュークモンクリムゾンモードも「C・デュークモン」名義での登場だったりするが…。

 また、2002年7月4日に発売された「デジモンワールド3」においても、ベルゼブモンはブラストモードだけがベルゼブモン名義で登場している。
(一応OP映像にのみ、ベヒーモスを駆る普通のベルゼブモンも登場)

 「ブラストモード」の由来は、飛行能力や陽電子砲による火力を、そのままblast(突風・爆破)で表しているのだろう。
 ちなみに、ベルゼブモンの由来「ベルゼブブ」は「蝿の王」なのに、ベルゼブモンにはハエの要素がないというのは度々言われるが、
ベルゼブブは単に「ハエの王」だけでなく、「空を飛ぶ者の王」とも呼ばれるようなので、
ベルゼブモン(ブラストモード)は黒いボディと飛行能力で、一応ベルゼブブ要素を満たしていると考えられる。


≪まとめ≫

 そんなワケで、やはりベルゼブモンは当初ブラストモードだけを想定したキャラであり、通常形態は後付なのはほぼ間違いないだろう。
(確定とするにはイマイチブレイブが足りないし、いずれ関係者さんがポロリと実情を零してくれるかもしれないので少し濁しておく)

 なんとなくそう思って調べた結果をまとめただけで、決してこの予定変更(仮)が悪かったと言いたいワケではない。
むしろ、段階を分けたコトでアニメ本編のシナリオにはメリハリがついたし、
普通のベルゼブモン、ブラストモードとどちらにも良い所があるのだから、大成功だったと思う。

 それはそれとして、近年のゲームなどでは、「ベルゼブモンは登場するのに、ブラストモードが全然登場しない」という扱いになりがちだ。
アクションフィギュアのD-Artsなんかでは、事前にブラストモードの換装パーツをチラ見せしておきながら、
結局普通のベルゼブモンしか発売しなかったため「ブラストが出るまで待つか」と買い控えを起こし、ベルゼブモンは投げ売られる結果になってしまった


ちなみに右上に映っている下半身はパイルドラモン(未だ販売ならず)。


 パワーアップ形態があるのなら、そっちも出して全力を尽くしてほしいのはファン人情としては当たり前のコト。
同期のクリムゾンモードが全然実装されないデュークモンともども、せっかく人気キャラなのだからもっと丁寧に扱ってほしいな、と思うのでした。


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